第14話 結果発表
俺の家に3人が来てから2日。
一週間もあっという間に過ぎて今日は金曜日だ。
そして今は昼休み。
教室の一角で勉強会メンバーが集まっていた。目的はもちろんテストの点数についてだ。
木曜日から徐々にテストが返ってきて今日の午前で5教科は全て帰ってきたためこうして集まっている。
目標点数にいったかいってないか。必ず他の人が点数を決めるからズルはできない。
ちなみに俺は80点以上取ることが出来ていた。
みんな集まったのを確認した莉沙が切り出す。
「よ〜しみんな集まったね! ということで今から報告会しま〜す。目標に届かなかった人は残念ながらお祭りには行けませ〜ん!」
莉沙の点数はまだ聞いてないけど、どうせ行くのが確定しているからかテンションが高いな。
ちなみにお祭りは土日で行われるらしいことは事前に聞かされていたのでみんな予定は空けているらしい。
「じゃあ、あたしね〜」
後ろで組んでいた手を前に出しテストを見せびらかすように広げる。
「じゃじゃ〜ん! 80点で〜す! 本当よゆーだった〜!」
うわ、てっきり点数は取れてないのかと思ってたけどちゃんと取れていた。
でも、よゆーって……莉沙の目標は80だったよな? どこがよゆーなんだか………………。
「そこ! なんか文句あるの!」
俺の心の中を読んでいたのかと思うよなタイミングで俺に指差してきた。
顔に出てたのか……。
「いや、目標が80だったらどこがよゆーだったのかと…………痛い痛い! すみませんでした!」
俺が思ったことを言うと思いっきり首を掴まれた。
いや、めちゃくちゃ痛かったんですけど。力加減以前にこんなに力あるのかよ……。
「じゃあ俺な〜。俺も余裕だったぞ」
次に見せてきたのは大輝だ。
点数は88。自信なさそうだったけれどしっかり点数を取っている。
目標が85だったのは佐藤和希に決められたらしい。
「じゃあ次はうち〜!」
そこからはみんなテンポ良くテストを見せていく。宮田さん、一之瀬さん、昴生、みんな目標以上の点数をしっかりと取っていてこれが本当の余裕だろうなと思った。
次は姫路さんの番だ。
教科は数学で点数は100だ。俺が指定した無理難題のような点数だけど、取れたのだろうか?
まぁ、テストが返ってきた時の姫路さんと先生の反応でなんとなくわかるけど。
「私はこんな感じ」
当たり前のようにテストを広げて点数を見ればそこには花丸つきの100という数字があった。
「まじか」
「本当に取れるんだ……」
「ガチで頭いいんだ」
男子陣は俺も含めてみんな驚いている。
女子はみんな知っていたみたいでそれほどリアクションはない。
頭いいのも知ってたし100点を取れるのも知ってたけど、ちゃんと取ってくるのはさすがとしか言いようがない。
「次は佐藤くんだよ」
この前のへまはしないように、少し意識しながら俺のことを呼んだ。
俺もすぐにテストを見せる。
「はい。一応、目標は超えたかな」
「おぉ〜〜〜〜」
姫路さんは感嘆の声を上げながらも口角がだいぶ上がっていた。
これは2人だけの勝負は負けたみたいだな……。
まぁ仕方ないか。それに変なことさせられるわけでもないと思うし。
「結構余裕あるじゃん! まじめか!」
「俺は莉沙と違って頭がいい…………やめろって!」
ちょっとした冗談を言おうとしただけなのに莉沙は俺の首に手を添えてくる。
俺は慌ててそれから逃げた。
本当に怖い……。
「じゃあ、最後はあんた!」
莉沙が雑に呼んだのは佐藤和希だ。
そういえばこいつ、いつもはうるさいのに今日はやけに静かだな。
俺の点数を見ても何も言ってこないし、姫路さんを褒めようともしない。珍しすぎてびっくりだ。
その佐藤和希は俯いていた顔をあげた。
確かこいつは、生物で85だっけか。姫路さんを除けば周りより少しだけ高い目標だ。
元々の学力を知らないから全然予想ができない。
「う、うん……」
いつもの威勢が全くない佐藤和希は恐る恐るといった感じでテストを自分の胸の前に持ってくる。
しかし、10秒くらい待ってもなかなかテストを広げようとしない。
しびれを切らした莉沙が急かす。
「ねぇ早くして」
「わ、わかってるって……」
「あ〜もう! ちょっと貸して!」
莉沙が無理矢理テストを奪って点数を見る。
「84……あんた目標何点だっけ?」
「……………………85」
「おつ〜!」
「ぶっ」
まぁ反応でなんとなくわかってたことだが佐藤和希は点数が届いていなかった。つまり、祭りには来れないということだ。
ちょっと嬉しい。
莉沙もちょっと嬉しそうにテストを返している。
大輝に関しては堪えられなかったのか笑っていた。ちなみに俺は笑ってないからな。
「で、でも! 1点だよ!? 別に赤点取ってるわけじゃないし、目標には届いたのと同じようなものだよね? だから僕も行っていいよね、祭り」
莉沙に泣きつくように言い訳を言っている。
往生際の悪い奴だ。
周りを見てみるとみんな哀れなものを見るような目で見ている。
かわいそうに……。まぁ俺もそんな目をしてるのだけど。
「おい、お前さっさと諦めろよ」
「うるさいな! 大体君が僕の点数決めたからこうなったんだ!」
「はぁ? お前が俺の点数決めるって言うから俺がお前の決めてやったんだろ。それに俺と目標は85で同じだ。なんか文句あんのか?」
「そ、それは……」
大輝に思いっきり言い負かされている佐藤和希。
その惨めな言い訳に一同の目がどんどん死んでいく。
俺だけじゃなくみんなにも好かれていないみたいだ。まぁこんな性格だしな。
「あ〜じゃあこうしよ〜」
ちょっと面倒臭そうに莉沙が手を上げた。
「最後は姫奈に決めてもらう。それでどう? これだったら文句ないよね?」
「それは…………そうだね」
少し迷った後、佐藤和希は頷いた。
佐藤和希は姫路さんのことが好きで一緒に祭りに行きたいんだろう。これくらいは聞かなくてもわかる。
その姫路さんが拒否したらちゃんと諦めるって考えか。莉沙のくせによく考えている。
そんなことを思っていると莉沙から冷たい視線が飛んできた気がしたので慌てて目を逸らす。
「私が決めるのかぁ……。まぁそれでいいならいいよ」
頬をかきながら困った様子で佐藤和希の前に行く姫路さん。
「お願いします……」
それ対して神に祈るように両の手を合わせているのが佐藤和希だ。
なんかやばい崇拝者みたいになっている。
「まず、目標点数が85点なのに文句はもうないんだよね?」
「はい……」
「それで君は84点だったわけだ」
「その通りです」
佐藤和希は少しも文句を言わないでただ姫路さんに頷くだけだ。
本当にわかりやすいんだな……。
一方、姫路さんはいつもと少しオーラが違っていて目が怖い感じがする。
いや、めっちゃ怖い。
「ルールは点数に届かなかった人はお祭りには行けないだよね?」
「はい」
「これはみんなで決めたルールで君も異論がないから頷いた。ルールっていうのはさ、みんなが公平になるようにあるものだと思うんだよね」
「その通りです」
「じゃあ例えば君があるテストで29点を取ったとしたら、この学校の赤点ラインは30点だから君は赤点になるわけだ」
「………………」
姫路さんのいつもと違う口調で少しずつ追い詰められている佐藤和希はとうとう何も喋らなくなった。
何も言い返せないような追い込み方をしている姫路さんすごい……。
「そうなった時、後1点だからいいですよね? ってならないよね?」
「ならないです……ね」
「じゃあ今回、君はそんなことが許されると思う?」
「ゆ、許されないです」
だんだん佐藤和希が怯えてきた。
姫路さんは顔が笑っているようで全然笑ってないし、もしかしたらイラついているまである。
佐藤和希のことが嫌いなのか?
「そうだよね? みんな頑張って目標に届いたわけだから。じゃあ君はどうするべきかな?」
「し、失礼しましたぁ!」
最後に凍て付く目で見つめられた佐藤和希はすぐにその場から走り去った。
そしてしばらくみんなも凍ったように動かなくなる。
「いや〜ちょっと言いすぎちゃったかな〜? まぁこれで解決でしょ!」
白けている空気の中姫路さんが独り言のように言う。
先程までの目ではなくていつもの優しい眼差しに戻ってはいたけど俺たちにはさっきまでの尋問のような光景が脳裏に焼き付いている。
「「「「「「「怖ぇぇぇぇぇぇ」」」」」」」
俺たちは口を揃えた。というより勝手に揃った。
それを聞いても姫路さんはなんのことかよくわからないのか、1人だけ置いてかれていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます