第5話  二人で水浴び

「そんなに身体が痒いのなら、水浴びでもしてくれば良いでしょう!」


「水ぅ~!?」


 明らかに嫌そうに眉をひそめて、キースが言った。


「この神殿に湯浴び処はありませんが、井戸の所で水浴びは出来ますよ」


「水ぅ~」


「嫌なら良いですよ」


「分かった!水 浴びで良い! 痒くてたまらん! もう少し、付き合え」


 オーリは、恨めしそうに腰の縄を見た。


「早くしてくださいね」


「一緒に水浴びしようぜ」


「なんで、文字の後ろにハートが出て来るんですか?」


「分かってるくせに~~ お前は今、俺のこ・い・び・と」


「……ってそういう意味で僕を離さないんですか!?」


「分かってるくせに」


 キースは、茶色の切れ長の目で、ウインクした。

 嬉しいと思ってしまったのは、オーリの性癖である。


 この国の未来の国王になる世継ぎの王子に言い寄られるとは、幸福なのか、不幸なのかオーリには分からなかった。


 オーリの反応に満足したのか、キースは早速、オーリに井戸に案内させた。


 夕方のため、井戸の所には誰もいなかった。


「良かった、誰もいません。今なら水浴びできますよ」


 キースは思い切り来ていたものを脱いで、裸になって待っている。


「俺の身体はどうだ?」


 自信たっぷりの顔で、オーリの前に仁王立ちになって聞いて来た。

 手入れの行き届いた髪が、今は寝ぐせで跳ね上がっている。

 小柄に見えていたが、均整の取れた体格だ。

 イチモツも立派だった。


「あの、王子様……僕は尊いお方のお世話の仕方なんて知りませんよ。ご自分でやって下さい」


「俺もやったことはないぞ!! 服は自分で脱いでやったんだ!! 後はやれ」


 キースは何処までも不遜で傲慢だった。

 オーリは、ここでまた時間を潰すのもバカらしくて自分も裸になって、キースの身体を洗ってやった。

 白くて、艶やかな肌をしていた。

 自分も色白だと思っていたが、玉のような肌とはこういうのを言うのだろう。

 途中、キースが後ろを向いて、下の方を見て、


「俺の方が勝ったな……」


 と言って、ニヤリと笑った。

(人の気にしてることを……)

 オーリはキースをこする手に力が入った。

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