第4話  正体バレた

「ここは何処だ!? お前は昨日の?」


 オーリは、眉がひくひくしている。


「キースティン王子様!! 世継ぎの君が何やってるんですか?」


 その問いにキースは笑って答えた。


「三日間のアバンチュールの最中。お前は俺に選ばれたえある恋人だ」


「恋人!?」


 キースはもちろんだが、オーリも男である。


「男ですよ、僕は」


 オーリの否定にキースは人差し指を立て、口元に当てて


「ちっちっちっ、お前は俺の同輩のはずだ。俺は人を見る目だけはあるんだよ」


 タラリと汗をかいたオーリである。


「それとこの不思議な縄ですが?」


 オーリは腰の銀色に光る縄をに手をやって言った。


「それは俺の特技。俺の叔母上は物凄い魔法使いだったらしいから、俺にも何か出来るかと思って出来たのが、この縄の術だったんだ。風の縄というそうなんだ。なんでも、俺には、風の加護があるらしい。」


「だったら早く、解いて下さい。僕はあなたと違って、暇ではないのです。今日はもう、日暮れで神殿に泊まるしかないけど、仕事と住む場所を決めなければならないんです」


「お前も訳アリなのかぁ……」


 キースは一本取ったとばかりに笑っている。


「よし、俺の相手をすれば、三日後にはお前の言い値を払おう。後二日、お前のクエストは、俺の相手をすることだ。最後の夜は一緒に寝ることだ」


「寝る!?」


 オーリは大声を出してしまった。


「お前も女に興味が持てないん質なんだろ?」


「うぅ……」


 オーリは、何も言えない。

 事実だから。


「ところで、湯浴みがしたい。着替えもしたい。なんか、身体が痒いぞ」


「ここは、王城ではありませんよ、王子様。神殿の旅人用の無料の宿泊施設なんです。そりゃ、ノミでもいるんじゃないですか?」


 キースはベッドから、飛び上がって起きた。


「う~ 湯浴みがしたい~」


「銀の森になら、大神殿に大浴場もついてますよ。旅人にも開放されてます」


 キースはピクン!!


「いや、あそこは駄目なんだ……」


 その答えにオーリは、心底がっかりした。

 もしかしたらこれを理由に、縄を解いてもらえると思ったからである。

 オーリは、銀の森から来たのだ。

 出て来たのだ。

 戻るつもりはなかった。

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