第23話 狩りの楽しさ、守られる嬉しさ、そして押し掛ける3人のメイド

X X X



 俺とアリスが付き合うようになってから、俺の日常は少し変わった。まず、服装。今まで上級冒険者用(魔法使い向け)の服を着ていたのだが、今はそうもいかない。


 屋敷にいる時は、自衛隊の制服姿で生活している。最初はこの世界の服を選ぼうとしたのだが、2人の姉妹は俺の自衛隊の制服姿が大変気に入ったらしく、目をキラキラさせて「この姿が一番いい」と口を揃えて言ってくれた。

 

 そして俺は、


 今、戦闘服を着た状態で、ラオデキヤ王国のとある辺境地でアリスとカロルと戦闘を楽しんでいる。


「食らいなさい!」


 カロルが甲高い声で、火の玉をぶっ放す。


 すると、


「「グエエエエエエ!!」」


 あっという間に、上級スライムが倒れていく。やがりクラス5と言うべきか、単なる火ではなく、まるでマグマのような破壊力の持った火の魔法。


 すると、今度は


「ゴアアアアアアアアア!!!!」

 

 カロルの方に複数の巨大トカゲが襲ってきた。


「きゃっ!」

「カロル!動くな!M82バレット……召喚!アリス!耳塞いて!」

「え、ええ」


 俺はそう叫んで、M82バレット対物スナイパーライフルを召喚し、巨大トカゲの頭を狙って片っ端から処理していく。


「ブエエエ!!」


 12.7x99mm NATO弾のものすごい威力が巨大トカゲの頭を貫通すると、断末魔の声を上げてすぐ倒れる。


「私……お兄様に守られていますわ……嬉しすぎて……っ!」


 すると、


「キオオオオオ!!!」


 空から火を吹くレッドドラゴンが現れた。頬を赤めて俺を見つめていたカロルは、急に目をはたと見開いて、口を開く。


「レッドドラゴン!?あれは私と同じ火の属性だから倒せません……」


 ……なんとかカロルを守らなければならない。とりあえずこのM82バレットの強い破壊力を利用して、こっちに誘導して、前回と同じく対戦車ミサイルでやっつけよう。破片は土嚢を召喚すれば問題なし。


 そう判断した俺は早速、カロルへと猛烈なスピードで飛んでくるレッドドラゴンに狙いを定める。


 すると、隣にいるアリスが


「晴翔」

「?」

「私に任せて」

「できるか?」

「うん。私の妹だもん。それに、レッドドラゴンの火はカロルに通用しないわ。だから気をつけるべきは物理攻撃」


 そう言ってアリスが、右手を上げてカロルの方へと向ける。


「はあああ……」


 アリスの気合いと共に火の魔法使いであるカロルの周辺には分厚い氷ができて、カロルを覆った。レッドドラゴンはその氷に向かって強力な火を放った。そして、鋭い爪で分厚い氷の壁を破壊しようと躍起になっている。

 

 だけど、アリスは氷の壁に神経を集中させて、溶けた氷を修復していく。


 壮観だ。


 氷が火に当たって発する音と、爪と氷がぶつかる音。


 俺は念の為、戦車の分厚い装甲の一部を氷の中に張り巡らせてから、M82バレットでレッドドラゴンの足を狙う。


「アリスまた耳塞いで!」

「わかったわ!」


 俺はアリスの声を聞いてから引き金を遠慮なく引く。


 ターン!!


 衝撃波によって土ほこりが舞う臨場感。そして放たれる弾丸。


 それは見事レッドドラゴンの足に命中した。アリスの氷により止まって攻撃するレッドドラゴンは狙撃しやすかった。


「キイイイイイ!!!」


 すでに切断された足を見てのたうち回るレッドドラゴン。そして、このままだと自分の命が危ないことを察したのか、急に翼を広げて飛び上がる。


 よし。段々とカロルから離れていく。これこそ俺が望んだシチュエーション。アリスは氷の魔法を解除し、俺も装甲と狙撃銃を消した。


 俺たち3人の強さを思い知ったレッドドラゴンはそのまま切断された足から血を流しながら逃げているが、もちろん俺は奴を逃さない。


「91式携帯地対空誘導弾発射装置召喚!」


 俺がそう(ノリで)唱えると、長い形の91式携帯地対空誘導弾発射装置が姿を現す。そして、俺はレッドドラゴンをロックし、


「食らえ!」


 ロケット弾を発射させた。すると、ものすごい速度でレッドドラゴンの後ろをめがけて弧を描くミサイル。


「一度も見たことのない武器だわ……まるでこの世のものではない形……」


 アリスがそう呟いて口を半開きにしたまま、ミサイルを見つめる。


 やがて、ミサイルは、レッドドラゴンの背中に命中し、翼が抉り取られたレッドドラゴンはあえなく落ちる。


 そして俺は測ったように、また唱えた。


「ジャベリン……召喚!」


 すると、分厚い筒状の形をした対戦車ミサイルが現れた。


「お兄様……頑張って!カロルが応援しますわ!」

「カロル……無事で何よりだ」

「晴翔お兄様とアリスお姉様が私を守ってくれましたから、私はもう安全ですの!」


 いつのまにか俺の隣にやってきてドヤ顔を浮かべてサムズアップするカロル。そんなかわいい妹みたいな彼女の頭を撫でてから、俺は倒れているレッドドラゴンに狙い定める。破片を気にする距離ではないことに安堵のため息をついたら


 ロックオンが完了し、


「これで終わりだ!」


 と叫んでミサイルを発射させた。


 ミサイルは急に上昇し、レッドドラゴンめがけて凄まじいスピードで落ちていく。いわゆるトップアタックモードによる攻撃ってやつだ。ミサイルはあっという間にレッドドラゴンの硬い鱗を貫き爆発する。


「グエエエエエエ!!!」


 レッドドラゴンは最期の声を上げて、儚く炎と散っていった。俺は召喚した武器を全部消して、アリスとカロルのいるところに向き直る。そしてサムズアップし、


「やった!」


 そういうと、カロルは、俺に飛びついて頭を俺の胸にこずりだす。そして上目遣いして、


「お兄様……素敵……この高揚感……生まれて初めて感じますわ」


 そう言って、俺に微笑みをかける。だけど、まんまるな赤い瞳は俺を逃すまいと、俺の目を捉え続けた。


「ええ。晴翔と一緒じゃないと、こんな経験……できないわ」


 アリスの声によってやっとカロルの視線から解放された俺だが、青色の瞳が発する謎の迫力によって徐々にアリスの方に首が回った。


 アリスは、両手を自分のお腹に当てて、目尻と口角を微かに吊り上げる。


 俺は、この雰囲気に飲まれないために、口を開く。


「依頼もクリアしたわけだし、家に帰ろっか」

「はい!」

「うん」


X X X


「それにしても、この乗り物はすごく便利ですわ」

「ええ。馬車と比べ物にならないほど早いし、餌もいらないなんて」


 俺はアリスとカロルを自衛隊の高機動車に乗せて、果てしなく広がる荒野を走っている。


「まあ、軽油はいるんだけど」

「軽油?」

「軽油?」

「ああ、この機械を動かすためには軽油という液体がいるんだ」

「ほええ……」

「ん……」


 助手席に乗っているアリスと、後ろに座っているカロルが首を捻って補足説明を求める。まあ、説明すると長くなるから、スルーしとこ。

 

 俺は軽く笑って、窓を開けた。すると、心地の良い風が入り込んでくる。


「風、気持ちいいよね」


 風に靡くピンク色の髪を整えることなく、俺を凝視する二人。


「うん!」

「はい!」


 彼女らはそう明るく答えたが、相変わらず俺を見つめ続ける。早く前を見て、安全運転をしたいが、なかなかさせてくれないアリスとカロル。


 俺の家は小汚い宿ではなく、メディチ家の豪邸に変わった。


 そして、俺と一緒に狩りをしてラオデキヤ王国の平和を守りたいと頼み込んできたアリスとカロルを連れてきて本当に良かったと口角を微かに吊り上げた。


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 メディチ家の邸宅


 夜


「アリス!カロル!おかえりなさい!晴翔様も!」

「ママ!」

「お母様!」

 

 戦闘服から制服に着替えた俺は、無事にアリスとカロルを家に連れて行った(王都辺りからは馬車で移動した)。


 二人の姉妹はアニエスさんと談話を交わしている。


「今日はとっても楽しかったですわ!晴翔お兄様が私を守ってくださって、無事に帰ることができましたの!」

「拉致や襲撃される恐怖を感じずに外出ができたのは、本当に久しぶりです。お母様、私、嬉しくて嬉しくて……」

「ふふ、よかったですわね」


 アニエスさんは、自分が産んだ二人の娘を優しく抱きしめる。

 

 3人はずっと恐怖を感じながら生きていたようだ。こんなに親切でかわいくて綺麗で地位も権力も持っているのに、今まで彼女らに安全と安らぎを与えてくれそうな男が現れなかったことに怒りを感じる。


 握り拳を作ってこの異世界の貴族男性を恨んでいると、突然アニエスさんが俺に話しかけた。


「晴翔様」

「はい」

「今日は無理なお願いをして申し訳ありませんでした」

「いいえ。アリスとカロルの笑顔が見られて、とても楽しかったです。それに、二人ともとても強くて、むしろ俺の方が助かりました」

「ふふ、またまたご謙遜を……今日はゆっくり休んでください。ちなみに、明日は私もアリスもカロルも用事がありますので、リンゼとエリゼともう一人のメイドが晴翔様のをしてくれますわ」

「相手?」


 俺が小首を傾げて聞き返すが、アニエスさんは手の甲を口の端に当てて妖艶な笑みを浮かべるのみだった。


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 翌日の朝


 アニエスさんはビジネスの件で、アリスとカロルは魔法学院で授業を受けるために、夙に出掛けて屋敷に3人はいない。


 俺は少し遅めの朝ごはんを食べ終わって自分の部屋に向かった。


 すると、


 ドアの前にエリゼとリンゼとこの前、脱衣所で出会したメイドが立っている。隣にはゴージャスな服がいっぱいかかっている洋服かけがあった。


 大人しいリンぜさんが俺を見て口を開く。


「晴翔様、お待ちしておりました」

「これは一体……」


 俺が戸惑っていると、すかさず子供っぽいリンぜさんが口を開いた。


「晴翔様、脱いでもらいますよ」

「え?、ぬ、脱ぐ?」

「はい!」

 

 言っていることがわからなくて、怪訝そうに3人を交互に見つめていると、脱衣所で出会したメイドが恥ずかしそうに話す。


「今日は……一生懸命ご奉仕させていただきます……」


 ご、ご奉仕!?


「……」






追記



星5000突破しました!!!


今はランキングがだいぶ下がりましたが、頑張って完結までなんとか持っていきます!


(★と♡を押してくださると作者が大いに喜びます!)





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