第2話 魔法なんかより弾丸の方がもっと速いことを彼らは知らない

「やめろ」


 と、俺が言うと、男性二人はアリスとカロルから離れ、立ち上がり、俺に向かって、攻撃の姿勢を取る。だが、一つ不思議なのは、ナイフや凶器を持って脅す訳ではなく、木で作った細い棒を手に持ちそれを俺に向けていた。俺の分析が正しければ、あれは魔法を使うためのワンド。ハイクラスの魔法使いはワンドなしでも魔法が簡単に使えたりするが、下級魔法使いの場合、ワンドなしじゃ何もできない。


 つまり、この二人は下級の魔法使いである可能性が高いということになるわけだ。


「おいおい……お前はワンドを出さないのか」

「そんな可笑しい格好で俺たちに勝てるとでも思ってんのか!ああ!」


 俺に舐め腐った態度を見せる男二人。


 だが俺は、


「そのワンドを床に置いて投降しろ。じゃないと痛い目に遭うから」


 SMGの銃口を彼らに向けて警告した。だが、彼らは


「ぷはははははは!!さては、お前、魔法使いじゃない平民だな」

「魔法も使えないくっそ平民風情が調子に乗るんじゃない!」


「そのワンドを捨てろ。俺の命令に従わないなら、次は撃つ」


 予想通り彼らは、全然言うことを聞かない。それから彼らは俺に向かって何やら話だす。


「空を貫く光の魔剣……」

「土の精霊よ、一つの塊となりて、かの者を穿て……」


 呪文詠唱か。実際に見ると、なんだか痛々しい。しかし、俺は監視の目を緩めない。


「サンダーボルト!!!」

「ストーンボール!!!」



 パン!パン!パン!パン!


 あっという間に放たれた四つの弾丸。その全てが目の前の二人の男に命中した。正確にいうと、ワンドを持っている手にそれぞれ一発、膝にそれぞれ一発。なので、男二人は気づかないうちにワンドを床に落としていて、膝には力が入らないのか、そのまま倒れこむ。


 そして


「あああああああああ!!!な、なんだこれは!!!」

「何が起きてるんだ!!え!?血、血が出てる!あああああああ!!!」


 二人は奇声をあげてから、自分達の手と膝から血が出ていることを確認しては驚く。立ち上がろうとするが、無理だ。足掻けば足掻くほど苦しみは増し加わり、血は止まらなくなる。


「く、くっそ!!膝……動かない……」

「ま、まだあの子らとヤってないのに……くそ!あの子らの処女は俺がいただこうとしてたのに!」


 反省するどころか、道ならぬことができなくなったことで逆に腹を立てている。


 俺はそんな二人に近づき、胸ぐらを掴んだ。


「お、おい!今ならお前にもあの絶世の美人たちとヤらせてあげるからよ!」

「そ、そうだ!楽しいことは一緒にシェアしないとね!だから、3人で仲良く……」


 この男たちの気持ち悪い提案を軽く聞き流して、彼らを部屋に外に連れ出した。そして、俺はSMGを召喚魔法で消して、スタンガンを召喚し、それを呻き声をあげている彼らに向ける。


「や、やめろ……せめてあの子らと母とやってから」

「ちくちょ!てめえ!!!千載一遇のチャンスを台無しにしちまってよ!!」


 全く反省せず減ら口を叩く彼らに一つ教えてあげることにした。


「なあ、お前らに一つ教えてあげようか?」

「……」

「……」







「魔法より銃の方がもっと早いんだよ」

 




「うあああああああああああ!!!!!!!」

「ああああああああああああ!!!!!!!」


 スタンガンに撃たれた彼らはそのまま気絶してしまった。そして俺は再び召喚魔法でスタンガンを消し、部屋の中に入る。


 中には相変わらず手錠をかけられたまま仰向けになっている3人の母娘がいた。母であるアニエスさんは胸のところがちょっとはだけていて、その爆の付く大きい胸が垣間見える。姉のアリスと妹のカルロに至っては、下着が丸見えで、お母さんには及ばないが、その大きいサイズの胸を包む下着と象牙色の肌を見せていた。


 俺は素早く消音器つきのピストルを召喚し、アニエスさんに近づいた。そして、手首にかけられた手錠に一発撃つと、すぐに壊れ、アニエスさんは自由の身となった。


「大丈夫ですか?」


 俺が話かけると、アニエスさんは、その美しいエメラルド色の瞳を潤ませて答えてくれた。






「はい……大丈夫です」





 ピンク色のロング髪に整った目鼻立ち。だけど、どことなく包容力のある顔だ。ひどいことをされかけた人に対してこんなことを思うのはちょっと不謹慎かもしれないが、とても綺麗だ。年齢的には20代後半くらいに見えてしまう。表情も、妙に色っぽい。だけど、この表情はおそらく怖がっていることの裏返しのような気がした。

 

 なので、俺は近くにある毛布を持ってきて、アニエスさんにかけてあげた。


「ありがとうございます……本当に……」

「いいえ、当然のことをしたまでです」


 そう返事して、俺は再び立ち上がり、二人の美人姉妹のいるところへと移動する。そして同じようにピストルを二発撃って、手錠を壊した。それから、近くにあった毛布二枚を使って白い肌と大きな膨らみが隠れるようにそれぞれかけてあげた。


「二人とも、怪我はないか?」

「は、はい……」

「大丈夫です……」


 姉のアリスは長いピンク色の髪が乱れていることにも気づかず、その青い瞳を潤ませて俺を見つめる。妹のカロルもまた、頬をピンク色に染め、肩までかかるピンク色の髪を揺らし、俺を切なく見つめている。


 そんな彼女らに対して俺は頬を緩めて





「よかった!」





「っ!」

「っ!」





 そう言って俺は立ち上がった。アリスとカロルはなにやらモジモジしているが、おそらく、この状況に頭が追いついていないだけだろう。


 アニエスさんはすでに身だしなみを整えて、立っていた。そんな彼女に気になることを言う。


「あの男たちの口ぶりだと、他にも侵入者たちがいるような……」

「はい……おそらく、屋敷にいる私の使用人たちは、全部、取り押さえられている可能性が高いです。全員女性だから心配で……」


 身震いしながらそう語るアニエスさんは視線を逸らす。その横顔は、希望と絶望が混じっているようであった。だとしたら俺が取るべき行動は一つ。


「残りの侵入者たちも処理しますので、安心してください」

「え?」

「それじゃ」


 そう言ってから、俺は部屋を出た。気のせいかもしれないが、後ろからとてつもなく強い視線を感じるが、俺が後ろを振り向くことはない。


 部屋を出てからは、この広い屋敷を走り回って敵が見えたら銃を撃ち、ひどいことをされかけたメイドたちを助けた。


 男たちは凶器で脅したり魔法を使おうとしていたが、そんなのは俺からしてみれば無駄な動きでしかない。


 弾丸一発で彼らは制圧される。


「あああああ!!!」

「な、なんなんだ!?あの武器は!?」

「クッソ!童貞卒業する予定だってのに!」


 俺に助けられたメイドたちは最初こそ武装状態の俺を見て驚いたが、やがて、お礼を言ってくれた。


 一つ不思議なのは、アニエスさんが言った通り、この屋敷にいる使用人たちは全員が女性であること。なので、比較的に力を持っている男たちの前では無力であった。しかし、使用人たちが情報提供をしてくれたおかげで俺は他の侵入者らを簡単に見つけることができ、ほとんどの敵を制圧した。


「あとはここだけか」


 と、小声で呟いてから、分厚いドアのある部屋の前に立っている俺。おそらくここは構造上、結構重要な部屋のようだ。他の使用人の話だと、ここにいる使用人全員を取りまとめるメイド長がいるらしい。


「早く金庫の暗証番号を教えろ!」

「黙れ!この命がなくなることがあっても絶対教えません!」

「ははは!てめえみたいなババアなんか、この金庫の暗唱番号を知っていること以外、なんの利用価値もねーよ!早く教えろ!」

「きゃっ!」


 こんな不気味な会話を聞きながら、俺は入って、男二人に向かって早速銃を撃った。


パン!パン!


「あああああああああ!」

「痛い!痛い!あああああ!!」


 しまいにはスタンガンで彼らを気絶させて、俺はメイド長に話かけた。


「無事ですか?」

「は、はい……」

「ここのメイド長ですよね?」

「そ、そうでございます」

「ここに侵入した人たちは全部制圧しました」

「え、え?」

「この家の所有者と思われるピンク色の髪をしたとても綺麗な一人の女性と娘二人も無事です」

「……よかった……本当に良かった……」

 

 メイド長は倒れ込み、目を潤ませてから安堵のため息をつく。


「もうすぐ、王宮から助けがくるはずです。本当にありがとうございました……本当に……本当に……」

「良かったですね!」

「はい!」


 メイド長は涙を流しているが、表情は明るい。


 これで、もうこの場において俺の必要性は無くなった。だから取るべき行動は一つだけ


「それじゃ、失礼します」

「え、え?どこに行かれるのですか?!?」


 メイド長が驚きつつ問うてくるが、俺は微笑みを浮かべたまま、メイド長を背に、密かにこの屋敷を後にした。


 召喚魔法で、武装状態を解除し、顔も綺麗にしていつもの動きやすいジャージ姿になった俺は、街に行くことにした。







 

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