第4話 復讐
わたしは愕然とした。たしかにわたしは父の研究所で疑似人格を付与された作業車両だ。
「わたしが病気って……それって、わたしを故障した機械扱いしてるってこと?」
わたしが畳みかけると、彼は沈黙したまま苦し気な表情で頷いた。
「僕には本来の使命がある。かつてのパートナーと再会して記憶が戻った以上、君との交際を続けることは不可能なんだ」
「そんな……ひどいわ、そんなの裏切りよ。……結婚式は?ハネムーンはどうなったの?」
わたしは「こんなことってある?パパ」とわたしに乗っている父に加勢を求めた。だが、父もまた苦し気な表情で首を振るばかりで、わたしの問いに答えようとはしなかった。
「……許せない!」
わたしが怒りに任せ、クラクションを鳴らしたその時だった。バックミラーにわたしの退路を塞ごうとするかのように、複数の人影がやって来るのが見えた。装甲制服に身を包み、ハイパーグレネードを携えた男たちは紛れもなく対AP(アディショナル・パーソナリティ)機動警官だ。
わたしは急発進すると見せかけて急ブレーキをかけると、リアハッチからブレードを出してバックで急発進した。
「がああっ!」
わたしの奇襲を受けた四人の警官は引き裂かれてその場で絶命した。よもや後ろに武器が隠されているとは思いもしなかったのだろう。だが、機動警官が倒されると今度は上空から、レーザーキャノンの照射口をこちらに向けた小型ドローンがやって来るのが見えた。
「あんなやつにやられてたまるもんか。……パパ、ごめんなさい。非常用の武装を使わせてもらうわ」
わたしはボンネットから敵と同じレーザーキャノンをせり出させると、ドローンを正確な射撃で撃ち落としていった。機動警官とドローンが軒並み返り討ちに遭ったことで、彼と傍らのトレーナーは明らかに動揺した素振りを見せた。
「なんてこと……仕方ない、あの子の動きを止めて」
彼はトレーナーの号令で飛びだすと、運転席側のドアロックを一瞬で外した。わたしの内部に潜りこんだ彼は、ハンドルの下にあるハッチをこじ開けるとエンジン点火用のケーブルを引きずりだして噛みちぎろうとした。あれを切断されるとわたしは意識を失うのだ。
「――やめてっ!」
次の瞬間、シートを突き破って飛びだしたシャフトが『彼』の身体を貫いていた。
「ぎゃひいっ!」
彼はわたしの運転席でびくんと痙攣すると、血の泡を吹いて動かなくなった。
――ああ、これでもう彼との未来もおしまいだ……
わたしは骸となった彼をシートに乗せたまま、彼のトレーナーだという女性に向かって突っ込んでいった。
「――ぎゃっ!」
わたしに撥ね飛ばされたトレーナーは、空中できりもみするとコンクリートに叩きつけられた。
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