第4話 アイを込めた手料理を
「
4限目終了のチャイムと共に猫なで声が教室に響く。
その声の主は学年で......いや、この学校で一番可愛いと言っても過言ではない
彼女は学校一イケメンな
周りは花蓮も渉も美男美女なのでお似合いだと思っていた。
しかし、渉は花蓮が嫌いらしい。
理由は誰も知らない。
頑なに教えようとしないのだ。
無理やり聞くのも良くないと周りは判断し、そのことについては触れないようにしている。
「ほら、行こう!矢島くん♡」
「あぁ、行こう。」
ここで有無を言わず花蓮についていくのにはきちんと理由がある。
一度だけ、渉が花蓮からの誘いを断ったことがある。
その時の花蓮は鬼のような形相で怒り、泣き、挙句の果てには物を壊し、先生も手に負えなくなっていた。
言い換えれば渉は犠牲になったのである。
花蓮と渉が屋上へ向かうと教室の皆はほっと胸をなでおろした。
そして屋上には二人を邪魔しないように誰も来ていない。
これも花蓮のせいである。
花蓮が二人きりの時間を邪魔しないで!とわがままを言ったからだ。
花蓮は顔はとても可愛いが中身は独占欲の強い女なのだ。
「矢島くん♡ 今日ね、おべんとう作ったんだ。食べてくれる?」
「もちろん。」
そう言った渉の顔は目が笑っていない。
よほど嫌なのだろうが声に出さないところもすごい。
渉が花蓮から受け取った弁当箱を開けると異臭が漂ってくる。
「ッ......!」
渉の顔が青ざめていく。
「どうしたのぉ?矢島くん。残さずちゃーんと食べてね♡」
あきらかに体調が悪そうな渉を横目に花蓮はまるで何事もないかのように言い放つ。
渉は震えながらも箸を手に取った。
渉は目を瞑り、異臭のするソレを口に放り込んだ。
「ッ......!ッ.....ッ......!」
広がるのは鉄のような味。
居てもたってもいられなくなり、渉は屋上を飛び出しトイレに駆け込んだ。
我慢ができなくなり、トイレの個室で一気に吐き出す。
吐いても吐いてもあの鉄のような味が消えない。
「う˝ぅ˝ッ......はぁ......はぁ......]
やっと落ち着いたころには鉄のような味も口内からは引いていた。
「矢島くん?どこ?」
廊下から花蓮の声がする。
渉は花蓮に話を聞くために廊下に出た。
「あっ。渉くーん♡やっと見つけた......もぉ~、居なくなっちゃうからびっくりしたんだよ!ほら、お弁当食べよう?」
そう言って花蓮は食べかけの弁当を差し出す。
またあの悪臭がしてきて鼻をつまんだ。
しかし花蓮は当たり前のように箸と弁当を差し出してきた。
渉はその手を払いのけた。
「っ、痛っ。」
花蓮の顔が苦痛にゆがむ。
花蓮は何が起こったか分からず目を白黒させていた。
状況を理解したとたん花蓮の顔がかっと赤くなった。
「渉君⁉どういうこと⁉なんで!せっかく作ったのに......」
花蓮が渉につかみかかる。
が、渉は花蓮を払いのけた。
「......え?」
「......を......れた......?」
「渉、く」
「何を入れた?」
渉の口からは自分でも驚くほど低い声が出た。
その声のせいか花蓮は青ざめる。
「な、にって......私だよ!」
青ざめた花蓮の口からはあり得ない言葉が出てきた。
「......は?」
意味が分からない渉に、花蓮は続ける。
「だから、私を......私の、血をいれたの。」
何を言っているのか、渉は理解できなかった。
そんな渉を横目に花蓮は続ける。
「だって、渉くんは、私だけの物。私を愛してほしかった。だから、私の一部を入れた。つまり、」
『渉くんの体の中に、私がいるの。』
そう言った花蓮の目は狂気に満ちていた。
渉は心の底から恐怖を覚えた。
あぁ、こいつは狂ってる。
渉はその場を離れ、早退した。
そして、二度と学校に来ないまま転校していった。
しかし、花蓮は自分のせいで渉が転校したことに気づいていない。
「どうして?私は渉くんを愛していたのに......」
花蓮の目から零れ落ちる涙が、頬を伝っていく。
狂った愛が起こした悲劇
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