第2話 家族

 少年は起き上がった。

 『……なさい…起きなさい』

 と言う声を聞きながら。














 突然だが僕、■■ ■■は異世界に転生したらしい。


 僕がいつものようにゴミを被ったまま家に帰ろうとしているときだった。


 僕は急に来た目眩と痛みで膝を付いた。…

横断歩道の真ん中で。


 横からどんどんスピードを上げているトラックが見えた。


 地面を這いながら避けようとして、向こう側にたどり着いたとき、聞きたくない、でも聞かなければいけない声が聞こえた。


 「ばぁいばい♪」


 姉だ、僕の姉だ。


 僕は姉に頭を蹴られてトラックに轢かれた。


 そのとき、真っ先に出た言葉は、

 『やっと……解放される…』

 だった。


 瞬間、目の前が真っ黒に塗りつぶされた。


 僕の視界から、世界が消えた。














 僕はそこそこ裕福な普通の家庭に住んでいる。

 そんなことを考えながら、声の言う通りにダイニングまで歩く。


 家族構成は、父、母、弟、姉という、普通なものだ。


 僕が転生したこの世界は、剣と魔法の世界らしい。


 この世界には、災厄の魔獣とされる九つの呪いがある。


 この呪いは、魔女という称号を持つものが自らの生命力を代償に、世界に祝福を与えるという能力、『世界からの祝福』を使って、

歴代の魔女達が世界に残したものだ。


 何故そんな使い方をしたのか分からないが、きっとそれ相応の理由があったのだろう。


 そうこう考えている内に、ダイニングに着いた。

 「あら、おはよう、シュン」

 これが母さん。

 「おう、起きたか、シュン」

 これが父さん。

 「おはよう、シュン兄」

 これが弟。


 ここだけ見ると、ごく普通の一般家庭に見えるだろう。

 しかし…


 「…………」

 そう、これが姉だ、僕が来てから一回も喋っているところを見たことない。


 前の姉よりは何倍もいいが、これはこれで接しづらいのだ。


 「ああ、おはよう、みんな」


 しかし姉のことには触れない。


 姉は『神託』のあと、急に様子が可笑しくなったらしい。


 らしいというのも、僕はそのとき、謎の病気で病院に行っていたため詳しくは知らないが、きっと姉の称号が何かまずいものだったのだろう。


 姉は口を利かなくなったし、他の家族に聞いてみようにも、教えてくれる気配は全く無かった。


 姉は口を利かなくなる前は明るく、まるで前の姉が豹変する前の姿に似ていて少し距離を置いていたのも仇となり、『神託』での事は聞き出せそうに無かった。


 何事も無く食事は終わり、僕は外出の準備を始めた。


 そう、今日は僕の『神託』の日なのだ。

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