第2話 お狐さま in 異世界転移(前編)




「という訳で、早速異世界にやってきたのじゃ。」

「どういう訳ですか。」


 みたま様と分福が降り立ったのは、中世ヨーロッパ風の世界です。

 何やらゲームに出てきそうなファンタジーな装いの人々が行き交う街中で、衆目を集めながらみたま様は「ふっふっふ」と得意気に笑いました。


「人気じゃんるその壱! "異世界転生"! まぁ、今回のわし達は生まれ変わった訳じゃないので、正確には"異世界転移"、じゃな!」

「異世界……?」

「なんじゃ、分福。異世界も知らんのか。」


 にやにやしながらみたま様が分福を指差します。

 みたま様はマウントを取るのが大好きなのです。


「異世界というのは書いて時の如く『異なる世界』の事なのじゃ。現代日本から掛け離れたふぁんたじーの世界なんかが定番じゃ。他にもげーむの世界だったりもよく見る設定じゃな。」

「つまり、ここは元いた世界ではなく、全くの別世界という事なんですね。」

「正解じゃ。わしの神力じんりきで転移してきたのじゃ。」

「腐っても神様ですね。」

「そうじゃ! ……いや、腐っとらんわ!」


 そんなコントはさておき。

 みたま様の神力じんりき―――神様のすごいパワーによって、みたま様と分福は異世界にやってきたのです。

 中世風の石造りの町の中には様々な人物が歩いています。

 たとえば、現代日本であれば銃刀法違反でしょっ引かれてしまいそうな大きな剣を背負った剣士風の人物。

 たとえば、ご老人が持っているようなものではなく、魔法を使えそうな杖を持った魔法使い風の人物。

 現代日本とは全く違う世界だと理解させるには十分な世界観がそこにはありました。

 中には獣の耳や尻尾を生やした純粋な人間ではなさそうな人物までいます。


「へぇ。みたま様以外にも獣の特徴を持つ人間がいるんですね。」

「あれは獣人じゅうじんじゃな。獣の特徴を持つ人間で、まぁふぁんたじーでは定番じゃな。」

「だからみたま様がいても悪目立ちしないんですね。」

「……あっ。」


 みたま様が何かに気付いたようです。


「この世界だと、わしの"のじゃロリケモ耳娘"っていう個性が死んでないか?」

「あっ……。」


 分福も気付きました。

 普通に獣人がそこら辺を歩いている世界観では、みたま様が熱烈に押し出していた"のじゃロリケモ耳娘"の要素が完全に埋もれているのです。

 既にみたま様の容姿のアドバンテージが消失しました。


「……ま、まぁ! わしはケモ耳の個性抜いても美少女じゃし! のじゃ口調は貴重じゃろ!」

「そ、そうですね!」


 早速心が折れかけたのですが、無理矢理納得してみたま様は気を取り直しました。

 ちなみに、分福目線から見ると周りの人々も割と美形で美少女アドバンテージもないように見受けられたのですが、そこまで叩きのめす勇気はありませんでした。

 漫画の登場人物なんて、余程の悪意がなければ大体美形なのです。

 さて、容姿のアドバンテージの話はとりあえず置いておいて、分福は更にみたま様に尋ねます。


「ところで、この異世界でみたま様はどうやって信仰を集めるのですか?」

「わしの"ちーと能力"を使って成り上がるのじゃ。」


 みたま様は得意気に言いました。


「チート能力とは?」

「"ちーと"というのは"ずるっこ"という意味なのじゃ。要はずるっこして他を圧倒してこの世界で名を上げるのじゃ。」

「えぇ……ズルするんですか?」

「そ、そんな目で見るな! これは異世界ものでの定番なのじゃ!」

 

 みたま様は分福の視線に慌てながら言い訳を始めます。


「異世界ものの定番は、主人公が色々な経緯で"ちーと能力"を貰ったり、転生転移前の世界の知識で異世界に驚きをもたらしたりと、もらいもののや最初からもっておる"この世界にしてはずるっこな能力"を駆使して成り上がるものなのじゃ。主人公が最初から最強だったり無双するのが人気なのじゃ。」

「へぇ、そうなんですか。」


 分福はみたま様の早口の説明を聞いて、うーん、と唸り声をあげました。


「でも、最初から強い人が周りを圧倒していくのに何のドラマ性があるんですか?」

「分かっておらんのう、分福は。」


 疑問を呈した分福を、みたま様は「ぷーくすくす」と笑います。


「わしらが読んでおるのは漫画なのじゃぞ。"はっくしょん"という奴じゃ。」

「フィクションでは? くしゃみじゃないんだから。」

「い、言い間違えただけじゃ! とにかく! 現実とは異なるものを読むのに、どうして現実じみたものを読まなくてはならないのじゃ。」


 みたま様は拳をぐっと握って語ります。


「努力や苦労の末に長い道のりを経て辿り着く成功……それは実に立派なものじゃが、それは現実でも直面しなければならない人生そのものなのじゃ。わしらが漫画に求めるのは夢。漫画でまで現実を見せつけられても心は安まらぬのじゃ。」

「ふむふむ……。」

「だからこそ、最初から努力や苦労をすっ飛ばして、ガンガン進んでいく気持ちよさを漫画だからこそ味わいたいのじゃ。」

「なるほど。現実では上手くいかないからこそ、フィクションでくらいそういうものが見たいと。」

「その言い方は若干トゲがあるんじゃないか。別にこれは現実逃避じゃないからの。」


 みたま様はじろりと分福を睨みます。


「"見たいもの"を見るのが漫画やフィクションなのじゃ。今の時代では強い主人公が全てをねじ伏せていくのが人間の"見たいもの"だというだけのこと。まぁ、この風潮をあれこれ揶揄する輩もいるが、昔から主人公なんて大概最初っから強い事が多いからの。顕著になっただけで強い主人公の"かたるしす"は今も昔も変わらぬのじゃ。」


 長々と講釈を垂れたみたま様。

 その話を聞いた分福は感心したようにゆらりと揺れました。


「へぇ~。みたま様、何も考えずにぐだぐだと生きてるのかと思ったけど割と考えながら漫画読んでたんですね。」

「お前本当に失礼なやつじゃな! そんな暴言許す主はわしくらいのもんじゃぞ!」

「まぁ、みたま様みたいな神様についていく式神も私くらいのものだと思いますよ?」

「…………悔しいがお主しか式神残ってないから言い返せないっ!」

「……すみません。言い過ぎました。」

「謝られると余計にみじめになるじゃろ!」


 みたま様にもかつては多くの式神や眷属、配下の妖怪達がいたのですが、今では分福しか残っていないのです。みたま様も流石にそこは気にしていました。


「そ、それより、どうやってこの世界で成り上がるんです?」

「う、うむ! そ、それについては色々とぷらんを用意しているのじゃ!」


 気を取り直して、分福とみたま様が信仰を集める為の成り上がりプランについて話します。


「まぁ、立ち話もなんじゃし、歩きながら話そうかの。」


 みたま様はそう言って歩き始めました。

 石造りの街並みの中で、見慣れない文字があちこちにあります。

 それを眺めながらふよふよと漂う分福は疑問に思いました。


「見たことのない文字ですけど、不思議と読めるのは何故なのでしょう。」

「現実でも勉強なんて大変なのに、言語の勉強してるところいちいち漫画で読みたくないじゃろ。……という訳でわしの神力じんりきで最初から全て翻訳されるようにしてるのじゃ。」

「へぇ。みたま様ってドラ○もんみたいですね。」

「わしは狸じゃなくて狐じゃ。」

「いや、ドラ○もんは猫ですよ。」


 何でもできちゃうみたま様の不思議な神力じんりき

 大体の問題はこの神力じんりきがあれば解決するのです。

 ご都合主義というものではありません。これは神力じんりきなのです。

 そんな会話をしながら道を歩いて行くと、みたま様はとある建物の中で立ち止まりました。そこの看板には日本語訳で「冒険者組合」なる文字が書かれていました。


「冒険者組合とは?」

「冒険者の組合じゃ。」

「冒険者とは?」

「なんか冒険する人じゃ。ちょいちょいふぁんたじーの漫画に出てくるけどわしはよう分からん。」


 すごく曖昧な事を言いながら、みたま様は冒険者組合の中に入っていきました。

 中に入ると西部劇に出てくる様な酒場風のスペースがあり、奥には受付の人らしき人が入ったカウンターがありました。

 更にカウンターの両脇には大きな掲示板のようなものがあり、びっしりと張り紙が貼られています。

 みたま様はずかずかと中に踏み込んでいくと、カウンターの前に立ちました。

 外だとうるさかったので多少視線を集めていただけだったのですが、ここでは大人が多く、子供の様な見た目かつこの世界では見掛けない巫女服を着るみたま様は相当な周囲の視線を集めています。


「冒険者に登録したいのじゃ。」

「えっと……身分証のご提示をお願いします。」


 みたま様は受付嬢にそう言われた瞬間に黙りました。


「身分証とか居るのか?」

「は、はい。」


 この返答はみたま様にとって完全に想定外でした。

 冒険者登録なんて一コマくらいで片付けられるお手軽作業かと思っていたのです。割と役所みたいな手続きがいるとは思っておりませんでした。

 みたま様は神様なので、現代日本における身分証を持っていないのです。それに、現代日本の身分証を持っていたところで、この世界で見せたところで意味がありません。


 みたま様が困っていると、カウンターの奥から今対応しているのとは別の受付嬢が出てきました。初々しい今の担当とは違う、大人びた雰囲気のある受付嬢です。


「お嬢ちゃん。どうしたのかな?」

「お嬢ちゃん……?」


 子供扱いしてくる大人の受付嬢に、みたま様はぴくりと眉を動かしました。

 そして、たちまち笑顔になりました。

 みたま様は別に子供扱いされても怒りません。むしろ若く見られると喜ぶのです。


「冒険者登録したいのじゃ!」

「うーん、そうなのね。」


 大人の受付嬢はニコニコしながら応対しています。


「お嬢ちゃん。冒険者は大人にならないとなれないのよ。」

「わしは大人じゃ!」

「お嬢ちゃんは何歳?」

「1000歳!」


 分福はその話を聞いていて思いました。


(サバ読んだな。)


 みたま様の年齢は1400歳とちょっとです。陰陽師がいた時代から生きている超高齢です。400歳くらいサバ読んでいました。1000歳と1400歳ならあまり変わらないだろうと思いますが乙女は繊細なのです。

 1000歳と言われた受付嬢はあらあらと笑いました。完全に子供の冗談としか捉えられていませんでした。


「そうなのね。身分証を持っているかしら?」

「持っておらん!」

「うーん。それは困ったわねぇ。」


 受付嬢は苦笑しました。


「冒険者組合は身元の分からない人を雇えないのよねぇ。責任を負わなきゃいけないからね。お嬢ちゃん、お父さんとお母さんは?」

「おらん!」

「あら、そうなの……。」


 ちょっぴり受付嬢の表情が曇りました。

 傍目から見ていた分福は、完全に孤児の残念な子扱いされているのだと気付きました。分福はひそひそ声で耳打ちします。


(みたま様、一旦引きましょう。多分子供の遊びとしか思われてないです。)

(何を言っておる分福! わしは神様じゃぞ! 子供扱いされる筈がなかろう!)


 みたま様はすっと手を前にかざして声を上げます。


「<ステータス>!」


 次の瞬間、みたま様の目の前にブゥンと電光掲示板のようなものが現れました。

 そこには何やら意味の分からない言葉がぞろぞろと書かれていました。


「どうじゃ! このステータスを見ればわしの凄さが分かるじゃろう!」

「何それ……。」


 受付嬢は少し引いていました。

 表示されたのはみたま様のステータス画面でした。普通の人間ならびっくりの高レベルなのですが、残念、この世界はそういうゲーム風の世界ではないのです。

 全然知らない謎の電光掲示板を突然召喚したのを見て、受付嬢は困惑していました。流石のみたま様も話が通じていない事に気付きます。


「……今日のところは引き上げるとしよう。」


 みたま様はそのまま冒険者組合を後にしました。


「どうしよう分福! ここわしの思ってた世界と違う!」

「えぇ……この世界の事前リサーチとかしてないんですか?」

「そんな面倒な事する訳ないじゃろ!」


 完全に企画倒れのようです。


「身分証がいるんですよね? どこかで発行とかできないんですか? 役所とか探してみます?」

「いやじゃ~! なんでふぁんたじーの世界に来てまでそんな現実的な事しないといけないのじゃ~!」

「事前にちゃんと調べてこないからでしょ。」


 ブームといえど、作品ごとに設定は様々なのです。

 ノリと勢いでいけると思っていたみたま様のアテは完全に外れました。


「どうするんですか。そもそも私はどうして冒険者とやらになるのか全然知らないんですけど。」

「冒険者になると色々なお仕事をできるようになるのじゃ! そのお仕事でわしの圧倒的な実力を見せつける事でちやほやされていく流れだったのじゃ!」


 実力を見せる以前の段階で躓いていて、本当に実力を見せられるつもりだったのだろうか?と分福は思いました。

 何はともあれ冒険者になるというフワッフワな計画は早速頓挫したのでいつまでも駄弁っていても仕方ありません。みたま様の計画には最初から不安しかなかったのですが、その不安が的中した今、こんな世界に長居する必要もなさそうです。


「とりあえず元の世界に帰ります?」

「いや、まだじゃ! こうなったらぷらん"でぃー"じゃ!」

「AとBとCがもう失敗してる……。」


 既に3つの計画が頓挫しているようです。

 

 そんなやり取りをしていると、みたま様の背後に軽装のひょろっとしたバンダナの男が迫ってきました。


「お嬢ちゃん、ちょいと宜しいかい?」


 バンダナ男はみたま様に声を掛けてきました。くるりと振り返り、みたま様はにこやかに返事をします。


「なんじゃ?」


 みたま様は「お嬢ちゃん」と呼ばれる事に気をよくしているようです。

 若く見られる分にはご機嫌になるおばあちゃんなのです。

 バンダナ男は「ひひひ」と如何にも怪しい雰囲気の笑みを浮かべて、みたま様ににっこりと胡散臭い笑顔を浮かべました。


「冒険者組合でのやり取り見てたぜぇ。お嬢ちゃん、随分と珍しい魔法を使えるんだねぇ。」

「魔法……?」

(さっきの<ステータス>とか言ってだした電光掲示板の事じゃないですか?)

「ああ、あれか。あれは魔法じゃなくて神力じんりきじゃよ。」


 どうやら、先程冒険者組合で見せた<ステータス>とかいうよく分からない電光掲示板表示を見て、このバンダナ男は興味を持ったようです。


「俺っち、冒険者をやってる"ワール・ヒトラサイ"ってもんでさ。」


 バンダナ男、"ワール・ヒトラサイ"は自己紹介をしました。

 分福は名前を聞いてすぐにみたま様に耳打ちしました。


(みたま様……こいつ悪い人攫いじゃないですか?)

(なんじゃいきなり。見た目で人を判断したら駄目じゃぞ。)

(いや、名前がなんか……。)

(名前で人を判断したら駄目じゃぞ。きらきらねーむを馬鹿にする者もおるが、あれは親が悪いのじゃ。)

(えぇっと……。)


 分福もそれ以上、目の前の男が悪い人攫いではない根拠はなかったので、何も言えずに黙る事になりました。


「ほう。冒険者とな。して、わしに何の用じゃ。」

「受付じゃあ門前払いを食らっちゃいたが、俺っちは一目見ただけで分かっちゃったんだよ。お嬢ちゃん、きっと凄い力を持っているだろうってな。」


 実際神様なのでワールの見立ては間違っていません。

 そして、みたま様も褒められて「ほう」と感心したフリをしながらもにやけ面を隠せなくなっていました。


「分かってしまったか……分かる者には分かるものなんじゃな。」

「そこで、是非俺っちのパーティーに入らないかと勧誘に来たって訳よ。」


 どうやらワールはみたま様の勧誘に来たようです。

 分福はパーティーとやらが何なのかは分かりませんでしたが、恐らくは仲間のお誘いに来たのでしょう。

 みたま様も褒められて評価された上で誘われているので満更でもなかったのですが、そもそもみたま様は門前払いを食らって冒険者にはなれなかったのです。


「しかし、わしは冒険者じゃないのじゃが。」

「実は、パーティーに入れる分には、パーティーリーダーの責任でライセンスのないメンバーも加えられるんだよ。つまり、冒険者じゃなくても冒険者パーティーに加わる事はできるんでさぁ。」

「なんと! そんな抜け道が!」


 どうやら、冒険者のライセンスが取れない場合の抜け道を提示してくれたようです。

 しかし、分福はどうにもワールの言い分に引っ掛かっていました。


(みたま様。やっぱりおかしいですよ。)

(何がじゃ?)

(だって、みたま様あの場で電光掲示板表示しただけじゃないですか。どこに実力評価する要素があったんですか。)

(電光掲示板じゃなくてすてーたす画面じゃ! それと、きっとわしの可愛らしい見た目と、秘めたる力を見抜いたんじゃろ!)


 プラス思考全開のみたま様。人を疑うという事を知らないようです。

 ここまで乗り気だと分福も止める事もできず……そして何より、腐っても神様という事もあり、何かあっても大丈夫だろうと説得を諦めました。


「とりあえず、パーティー加入の話をしたいんで、立ち話もなんだしメシでもいかないかい?」

「おお! なんぱか! お主、なかなかにろりこんじゃのう!」

「え? え、えぇ……いや、そういうわけでは……。」

「よいよい! わしの魅力の前では仕方のない事じゃ! さぁさ、いこうぞ!」


 ワールが初めて苦笑いしました。




(何だこの獣人のクソガキ……調子に乗ってんなぁ……。)


 ワールは内心でイラついていました。


(しかし、実際中々に見た目もいいし、何より珍しいスキルを持っているようだし、こいつは高く売れるぜぇ……!)


 なんと! ワール・ヒトラサイは、悪い人攫いだったのです!

 みたま様が見た目のいい獣人でかつ、珍しいスキルを使っていたことを見て、攫って売れば金になると思い接触してきたのです!

 そうとも知らずにみたま様は、ワールについて行ってしまいます。

 美味しい話には裏がある、知らない人にはついていってはいけない、そんな事も知らないみたま様はまんまと騙されてしまったのです。


 ワールの先導で、みたま様と分福(分福はワールに見えていないようです)は町を歩いて行きました。

 辿り着いたのはどこか寂れた料理点です。

 店の中に入り適当な席に座ると、ワールは手を上げ店の中に呼びかけました。


「おっちゃん! いつもの!」


 店の奥から「あいよ」という声が聞こえます。


「何がおすすめなんじゃ?」

「鬼イノシシのステーキがオススメかね。」

「じゃあ、それにするかの!」

「おっちゃん! 鬼イノシシのステーキ!」


 店の奥から「あいよ」という声が聞こえます。

 ワールはにやりと不敵な笑みを浮かべました。


 実はこのレストラン、ワールとグルになっているのです。

 ここにターゲットとなる人間を連れ込み、睡眠薬を盛って眠らせて、売り払ってしまうという人攫い集団の拠点なのです。

 店主が水を入れたカップを運んできました。この水に睡眠薬が盛られているのです。ワールの「いつもの」という合言葉で運ばれてくる手筈になっているものです。

 そうとも知らずに、みたま様は運ばれてきた水を見て、にっこりと無邪気に笑いました。


「そういえば喉が渇いたのう!」


 そして、みたま様はぐいと迷う事なく水を一気にあおりました。


 みたま様の運命や如何に……!?




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