第10話 謁見

 その後、王城まで連れてこられた俺たちは、控え室に通された。


「ヤマト様、私の一番大きな鞄を出してもらえませんか?あと、あなた、ここの侍女ですね。着付けを手伝っていただけませんか?」


 そう言われて、俺は【空間収納】から鞄を出すと、俺は部屋を出る。ドアの横には鎧を着た騎士が立っていた。


「どちらへ?」

「ああ、女性陣が着替えをするんで外に出てきただけですよ。」

「……そうですか。」


 俺はそのまま騎士と一緒に廊下に立った。あの街のどこかにコンロを売っている店があるんだろうな。


「ヤマト様。」


 扉が開き、メフィが顔を出す。


「こちらに着替えてください。」


 そう言われて、服を渡された。貴族が着るようなヤツだ。


「これは?」

「こんなこともあろうかと、お父様に用意していただいたものです。それでは、しばらく外にいてくださいね。」


 バタンと閉じられる扉。俺は護衛の騎士を見て、肩を竦める。


「少し待ってくれ、案内を用意する。」


 騎士はそう言うと侍女を呼び、俺を別の部屋に案内するよう言ってくれた。俺はちゃっちゃと着替えて部屋の前に戻ってきた。


「ヤマト様、もうよろしいですよ。」


 メフィの声かけに俺は部屋に戻った。部屋にはドレスに着替えた3人がソファに座っていた。


「……昨日の今日でよくデルモのドレスを用意できたな。」

「ああ、我の人化なら衣服を変えることなど造作でもない。」


 ああ、なるほど。熟練度の差か。


「じゃあ、呼ばれるまでゆっくりしてるか。」


 俺もソファに座ると、侍女が紅茶を入れてくれた。




「よく来た。ドリュフェス王国の使者たちよ。」


 謁見の間に通された俺たちは王族に謁見する。とりあえずメフィが頭を下げなかったのでそれに倣って頭は下げなかった。上段に座るのは5人で、一番大きな椅子に座っているのが国王だな。他に男性が1人女性が3人座った、男性はおそらく王子で、女性は王妃と王女2人かな。ただ、王女の一人に見覚えが……、たしか将軍って名乗ってなかったか?


「謁見をおこなっていただきありがとうございます。私はドリュフェス王国王女メフィリア=レミー=ドリュフェスといいます。ですがまず、ひとつ訂正を。私たちはドリュフェス王国の使者ではありません。あくまでも”ラドファライシス王国に買い物に来た旅人”であり、父ドリュフェス王国国王の親書はこの国で何か問題が起こった場合にヤマト様と私の身分を証明するためのものです。」


 メフィが挨拶と訂正を告げた。だって、俺の買い物にメフィが付き添ってるだけだからな。ただ、その発言に周りがざわめく。


「では、謁見をするつもりはなかったと?」

「必要がなければ。我々は買い物と少しの観光をして帰る予定でした。まあ、王都に到着する前から問題が発生するとは思いもしませんでしたが。」


 メフィはそう言うとデルモに目をやり、デルモは肩を竦めた。


「こちらがその親書になります。」


 そう言って、メフィは書状を取りだす。その書状を侍従が受けとり国王陛下に渡した。


「……ふむ、なるほどなぁ。それならば本日この後の接待をクリスに任せておるので、クリスに聞けばいいであろう。クリスよ、彼らのことを任せるぞ。」

「え?あ、はい。お任せください。――――改めてご挨拶を。クリス=ウォルスター=ラドファライシスです。ラドファライシス王国王太子の婚約者で、王家の養子で、将軍です。明日は軍務で不在にしますが、よろしくお願いします。」


 そう将軍が改めて挨拶する。しかし、属性が山ほどだな。


「彼女はクリスリッタ商会の会長でもある。話はスムーズに進むであろう。」


 さらにもう1つあった!!?しかも、俺が行く予定だったクリスリッタ商会のトップも兼任かよ!


「では、よろしくお願いします。クリス様。」


 メフィが頭を下げる。本当メフィが一緒に来てくれてよかったよ。


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ラドファライシス側から見た話も「最強の王妃」に同時公開しています。


「最強の王妃」https://kakuyomu.jp/works/16816927861903463459


なお、前話でアドレスを間違っていました。既に修正しています。

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