第9話 ドラゴンで乗り付けてしまう

 俺たちはデルモの背に乗って一路ラドファライシス王国に向かっていた。無事ルナもデルモの背に乗れたので5人での移動だ。


「そう言えば、メフィはラドファライシス王国についてなにか知ってることないか?」


 王女だからそう言うことには詳しいかと思って聞いてみる。


「はい、ラドファライシス王国は隣国のグロバスデュア帝国からよく侵攻されているらしいです。」


 俺の前に座っているメフィが答えた。


「ということは、戦争中か。」

「はい、その可能性はありますね。何せ情報も半年前のものしか入りませんから。」


 いまは馬車でしか情報が回らないからなぁ。鉄道で結ばれれば情報は10日もかからないかな……。いや、うちマルサロア鉄道なら一瞬か。


「戦争には巻き込まれないように立ち回るようにしなきゃな。」

「そうですね。」


 と、話している間にお城が見えてきた……って!


「デルモ!近づきすぎだ!!」

「町の近くに行かねば移動が大変じゃろう?」

「馬鹿!国王のいる城の近くにドラゴンが現れてみろ!蜂の巣をつついたような騒ぎになって余計時間がかかるわ!」

「……あっ。」


 こいつ、なにも考えてなかったな。


「……仕方ない。とりあえず降りるぞ。」


 こうして俺たちはラドファライシス王国の王都に着いてすぐラドファライシス王国の人に迷惑をかけてしまった。





 俺たちが降りようとすると、ラドファライシス王国の騎士団だと思われる一団が攻撃を仕掛ける準備をしているのが見えた。


「ふむ、このままブレスをはいて焼きつく――――」

「焼きつくすな。これから仕入れに行こうとしている国の人だぞ。交渉ができんようになるわ!」

「では、どうするのじゃ?」

「……とりあえず声をかけてみるか。すみませーん!こちらはあなた方に危害を加えるつもりはありませんので、話が出きる人はいませんか~。」


 俺は下にいる騎士たちに声をかける。すると、この騎士たちの司令官から伝令が走るのが見え、司令官と思われる女性が一団の前に出てきて俺たちに向かって声をかける。


「私はラドファライシス王国の将軍クリスと言う。貴殿の名と我が国への来訪目的を答えよ!」


 将軍って軍の偉いさんじゃなかったっけ。うわ~もう少しで戦争になるところだったじゃないか。とりあえず返事をするか。


「俺はアダマンタイト級冒険者の大和と言う。この国に来た目的は……、買い物だ。」


 うん、こうとしか言いようがないよなぁ。あ、これも言わないとな。


「あと、俺の身分を保証できる同行者としてドリュフェス王国の王女殿下を連れてきている。」

「は?」


 対応してくれた将軍の目が点になる。そりゃあそうだろうな、いきなり他国の王族がドラゴンに乗って来たんだ。

 少し硬直した将軍だが、すぐ回りの人たちに指示を出していき、俺たちに向かってこう言った。


「わかりました。ラドファライシス王国将軍として、ドリュフェス王国王女殿下御一行のご来訪を歓迎します。突然のご来訪のため準備に少しかかりますのでこちらの平原でしばらくお待ちしていただけなければなりませんのでご容赦ください。」




 下にいる騎士たちの指示で着陸するデルモ。着陸したので俺たち3人はデルモの背から降りる。俺たちが降りたのを見てデルモも人化して、俺の横に立つ。俺はそのデルモの頭を思いっきり拳を落とす。ガツンという音が響く。


「何するんじゃあ!」


 デルモは頭を撫でながら口答えをする。


「当たり前だ!お城に直接向かうなんて馬鹿なのか!ラドファライシス王国の人たちに迷惑をかけて!将軍閣下……でよかったんだっけ?が、話をちゃんと聞いてくれる方だったからよかったものの、問答無用で攻撃、撃墜されてもおかしくなかったんだからな!」

「じゃが、離れたところで下りたら町まで時間がかかるじゃろ。」

「ルナがいたから、ルナで行くに決まってるだろ。」

「……ドラゴンとフェンリルじゃあ、あまり変わらんじゃろうが。」

「大きく変わるわ!出てくるのが軍か冒険者かで話がかなり違うぞ。」


 そもそも穏便に来たかったんだがなぁ。そう漫才をしていると、クリス将軍がこっちに来る。


「すみませんが、身分の確認のほうをさせていただけませんか?」

「あ、はい。これが冒険者証です。」


 俺は冒険者証を見せる。将軍はしっかりと確認したあと、メフィに話しかけた。


「で、そちらの方が……。」

「はい、ドリュフェス王国王女メフィリア=レミー=ドリュフェスと申します。」


 そう言ってメフィが挨拶をする。


「もし、何かあったときのために父ドリュフェス王国国王より親書を預かっております。――――まあ、本当は街中で問題が起こったときに使うはずでしたが……。」

「――――街に入る前に問題が起こりましたからね。御察しします。」


 あ、そんなの用意していたんだ。まあ、ある意味そのためについてきてもらった訳なんだけど。クリス将軍が伝令を走らせるのと入れ替わりで折り畳み式のテントと椅子が持ってこられた。


「馬車が来るまでこちらでおくつろぎください。さすがにこれ以外の準備はできておりませんのでご容赦を。」

「ええ、構いませんよ。突然ドラゴンで押し掛けたこちらが悪いのですから。」


 メフィの言葉がデルモに突き刺さっていったようだ、椅子に座りながら真っ白に燃え尽きてる。

 さて、馬車が来るまでどうしよう。






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さて、本文を読んでいただいたらわかる人はわかりますように、今回から数回にわたって「最強の王妃」の舞台である大和たちはラドファライシス王国に出張です。また、この話のラドファライシス側から見た話も「最強の王妃」に同時公開しています。


「最強の王妃」https://kakuyomu.jp/works/16816927861903463459


2023/4/25 21:22

すみません、アドレスを間違って「少女、皇帝になる」の方になっていました。今は正しく「最強の王妃」になっています。

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