第8話 航空機には勝てない

「さて、まず最初に話し合わなければならない予定は、………………いつ、温泉に行こっか?」


 俺がそう言うとみんなずっこけた。


「いやな、まだ言ってない話なんだけど、俺しばらくこの国を離れることになるから、その前に温泉にでも行こうかなと思ってね。」


 俺は超特大の爆弾を落とした。


「ちょちょちょちょっと待ってください!ヤマト様はこの国が嫌になってしまわれたのですか!」

「私だけやったら鉄道まわされへんで!鉄ちゃうから!」


 大慌てで引き留めにかかるメフィとアモリ。


「……食堂車を作るために必要なものを買い付けに行くだけなんだが。」

「「あっ!」」


 携帯用コンロを買いに行かないと長距離列車を運行する際に食事=駅弁になってしまい駅弁を売っている駅での停車時間が延びて遅延が回復しきれないくらい膨らんだり、積み残しが発生しかねない。寝台列車を運行するにもあった方がいい。まあ、駅弁を車販すればいいんだが、温かい食べ物にはかえられないからな。


「まあ、その事もあって、俺が長期出張をする前に行こうと思うんだ。」

「長期ですか?」


 メフィが聞いてきた。まあ、確かに俺がこの時期に長期出張するのは心配だろうな。


「ああ、この前商業ギルドから販売している国を教えて貰ったんだが、かなり遠くて品物を送るにも半年近くかかるそうなんだ。だったら俺とルナで行けば2~3ヶ月で帰ってこれそうだから行ってこようかと。」


 フェンリルのルナなら移動距離も馬車とは比べ物にならないくらい早いし、山越えも出きる。それに俺が付いていけば空間収納で一度に運べるからな。


「それはどこなのじゃ?」

「ああ、ラドファライシス王国ってところで、この辺りだな。」


 俺は商業ギルドで買った大陸地図を見せて言う。ここから2~3千㎞離れた場所にある国だ。


「ふむ、これだけでは距離はよくわからんの。我と出会ったとんねる?があるのはどの辺りじゃ?」

「ああ、ここだな。」


 あそこは王都から100㎞ないかなって距離だったはず。


「ふむ。なら我の背に乗って行けば1日もかからんな。」

「……へっ?」


 いや、北の山脈が邪魔で西から大きく回り込んで行かなきゃなんな――――あっ。


「……空を飛ぶってことか。」


 それなら山脈を直接越えられるのでさらに早く行ける。


「何時間で行ける?」

「うむ、2時間くらいじゃろ。」


 時速1000㎞以上か。やはり早さは航空機には敵わんな。


「それだけ速ければ日帰りも不可能じゃないな。余裕を見て1泊2日かな。予定が大分短縮できるなら……。となると、温泉旅行はその後に行けるな。なら、来月の半ばに行こうか。」

「そうですね。その方が良さそ……って、ちょっと待ってください。」

「ん、メフィどうした?」


 メフィが発言の許可を求めて手を上げる。


「私もついていきます。私はこのドリュフェス王国の王女ですから外交的にも話が早くすむかもしれません。ヤマト様はアダマンタイト級冒険者とはいえ他国では知名度がないかと思いますから、ドリュフェス王国の名を借りればいいかと。」

「そうだな……、確かにそのコンロを売っている商会が貴族絡みの商会だったらメフィがいると上手く話を進められるかもなぁ。じゃあ一緒に……とはいえ、デルモにどれだけ乗れるかなんだが……。」

「うむ、我の背なら2~3人は乗れるじゃろう。」

「そうか。じゃあ、俺とメフィとミュー、それと乗れるならルナにも来てもらうということにしよう。」


 ルナにはメフィの護衛をしてもらおうと思う。


「アモリ、温泉旅行のために全員のスケジュールを合わせてくれ、おそらくメフィの予定を合わせようとしたら絶対国王陛下も来るだろうから、お召し列車を準備してくれ。」


 すでに王家用の御料車は落成している。開業式典では専用のお召し列車を用意しなかったので、まだ試験走行しかしていない。


「あと、ユーフィの温泉の予約も頼む。国王陛下が来るって言ったらある程度融通が利くだろう。あと、メフィの外遊の許可も取っておいてくれ。」

「わかったわ。外遊は……2~3日待ってもらうかもしれないけど構わないよね?」

「頼む。しかし、アモリに秘書がいるなぁ。」

「むしろ、大和に秘書か執事を付けてほしい。」


 出きる人材はいるんだけどなぁ。色々考えて秘書室を設置するか。


「とりあえず色々考えてみるからしばらくはお願い。」

「了解。」




 メフィの同行はその日のうちに許可が下り、翌朝、俺たちはラドファライシス王国に向かって飛んでいった。

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