第6話 対ドラゴン(鉄)

 ナンユウゲキに戻ってきた翌日にはトンネルは貫通し、あとは鉄道施設の建設を残すだけだ。建設は土木課が頑張ってくれるので、俺が手伝う作業は終わった。と、いうことで……。


「さあ、我と戦うのじゃ。」


 と、デルモが言ってきたので戦うことが出きる広い場所に移動した。付き添いにはおそらく一緒についていても問題ないルナだけがついてきた。


「じゃあ、簡単なルールだけ決めておこうか。」

「うむ、そうじゃな。」


 デルモも頷いたので、問題の内範囲でルールを告げる。


「まず1つ、相手を殺すような攻撃はしないこと。2つ広範囲――――まあ、半径2~3㎞くらいかな。それ以上の範囲に影響を与える技を使わないこと、3つ降参したら追撃はしないこと。これでどうだ?」

「うむ、いいだろう。ではやり合おうか。」


 そう言うとデルモは本来の黒いドラゴンの姿に戻った。


「では、いくぞ!」


 俺は【空間収納】から刀を取り出し、正眼に構える。


「来い!」


 俺がそう言うと、デルモは空高く飛び上がった。確かに空を飛べない俺にたいしての戦術としては正しいな。だが……。


「《空気砲》」


 ズドン

 俺は魔力のごり押しで空気を圧縮し、その空気を土魔法と錬金魔法で作った筒状にした金属の塊の中を通して撃ち出した。


「ぐうぁ。」


 そう叫びながらデルモは墜落していく。《空気砲》で片方の羽根を突き破ったからだ。《空気砲》の発想は”トンネルどん”。理科の実験でやったことがある空気鉄砲とほぼ同じものだ。


「くっ。そんなことができるとはな。」

「さすがごしゅじんさま。」

「ああ、そうだな。俺も驚いた。それに、手の届くところに降りてきてもらわないと俺は戦えないからな。」

「いや、今のでも十分戦えるじゃろ!」


 そうデルモがツッコむ。うん、俺もそう思う。なんだよあの威力。


「ま、ともかく今は戦いに集中だな。」


 俺はそ言うと刀を構える。


「さあ、いくぞ!」


 俺は一気にデルモに近寄り、刀で斬りつけた。デルモは仰け反るようにして俺の刃をかわそうとするが……。


「ぎゃおっ!」


 俺の一撃の方が一瞬早く鼻先を掠めた。


「なかなかやるのぅ……というか、めちゃくちゃ強くないか?」

「ああ、俺はチートだからな。そこら辺のヤツより強いと思うぞ。」

「いや、ちょっと強いってレベルじゃないんだがな。我よりもはるかに強いと思うぞ。」


 そうため息をつくデルモ。


「そうか?」

「そうじゃ。……まあ、我から先に頼んだんじゃ、最後まで頑張るとしようか。ゆくぞ!」


 そう言うとデルモは大きく息を吸い込みブレスをはいた。


「お、ブレスか。でも、ここまで行けば……。」


 俺はブレスを掻い潜ってデルモの腹の前まで突っ込んでいった。


「くっ。」


 デルモはブレスを諦め体を捻り尻尾を振り回すが……。


「予想通りだ。」


 そう一言言って俺は尻尾の上で受け身をとるように回転しながら回避する。


「次はこっちだ。」


 俺は火と風の魔法を掛け合わせ炎の竜巻を産み出しデルモに向けて放った。


「って、熱っ!」


 あまりにも至近距離で使ったから俺のとこまで熱風が来たので、竜巻を止めた。熱で陽炎のように空気が歪んでいるが、どうやらデルモは無事のようだ。


「じゃあ、次は……。」

「待て待て待て待て!今のは反則じゃろ!というか我でも死ぬわ!!」

「反則?」

「ああ、本気で死ぬかと思ったわ!それにあの魔法は広範囲に被害出るじゃろ!」

「あ~すまんすまん。ここまで力を使って戦ったことなくてな加減を間違えた。それと、今の魔法も範囲はほんの2~300mくらいしかないぞ?」


 俺のその言葉に顎を落とさんばかりに驚くデルモ。


「とりあえず、俺の反則負けかな。」


 俺がそう言うと、デルモは目を見開き、くっくっくっくわっはっはっはっ。と笑いだし。


「いや~、愉快愉快。お主は我よりも強いのにも関わらず、反則したから敗けだと言う。本来なら我の方が敗けを認めるにもかかわらずな。」

「そうか?」

「ああ、そうじゃ。ま、曲がりなりにも我が勝ったのなら何かひとつ言うことを聞いて貰おうか。」

「あー、まあ、俺ができることならいいよ。」


 まあ、よほどのことがない限りチートやマルサロア鉄道の力を使えばなんとかなるだろうと思い言ったのだが、帰ってきた答えは予想の斜め上だった。


「ならば、我とつがいになってほしい。」

「……はあっ!?」

「ぐるるるるる……。」


 想定外のことに俺は思わず声を上げてしまう。ルナも唸り声を上げるし。


「と、とりあえず、理由を聞いてもいいか?」


 そう言うと、デルモはキョトンとした。


「何を言う。強き者と番になりその子種を貰うのは自然の摂理じゃろ。それとルナよ、我は別にヤマトを連れていくつもりはない。強き者に複数の番がいるのは当然じゃろ?」

「……なら、問題ないね。」

「いや、問題しかないぞ。」


 俺にだって選択肢を貰いたい。別に俺はハーレムでウハウハをやりたいわけじゃないんだよ。鉄道に乗りたかっただけだ!

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