第5話 ○○列車に乗る(鉄)
それは空からやってきた。その姿は爬虫類のシルエットに翼が生えたものだった……ってドラゴンじゃないか!
「あれってドラゴンだよね?」
「え、ええ。私たちじゃあ逆立ちしても勝てない相手です!」
ルナたちの付き添いできてくれた《
「ここは俺たちに任せて下がって。」
「は、はいぃぃぃっ。」
《
「お主がこの辺りで大量の魔力を放出していたものか?」
と、この世界の言葉で聞いてきた。さすがドラゴン、人間の言葉が喋れるんだなぁ。
「今日の話なら俺だな。」
「なら、我と戦え!」
「断る!!」
「……なぜじゃ?」
「単純に魔力を使いすぎたから休みたいだけだ。戦いたいなら暇なときにしてくれ。」
「……そうか。では、明日なら問題ないな。」
そううれしそうに言うドラゴン。
「いや、明日も魔力を全開で使っての工事だ。ちなみに明後日もだな。」
「う、そうなのか……。」
「そうだ。」
「な、なら我が手伝ってやろう。それならば明後日には戦えるだろう。」
しゅんと項垂れたあと、いいこと思い付いた様子で提案してくるドラゴン。
「うーん。確かに手伝ってくれたら早く終わるけれどな……。」
「そうじゃろそうじゃろ。」
そう言ってブンブン尻尾を振るドラゴン。なんか犬みたいだ。
「じゃあ、幅4m高さ5m側壁の下から3mから半円状になるように天井を作ったトンネルを掘ってくれ。トンネルは蛇行せずまっすぐ、かつ壁面は石灰を主成分とする強度のある物質で覆ってくれ。できるk「できるか~~~~~!!」」
ツッコんできたドラゴン。そんなに難しいかなぁ?
※作者注:大和がチートなだけです。普通は一人ではできません。
「じゃあ、3日待ってくれ。」
「う、うむ。わ、わかった。」
「で、他に用はあるのか?」
「お、うーん。我はお主の魔力を感じて戦ってみたくて来ただけじゃからなぁ。……ところでひとつ聞いてもよいか?」
「なんだ?」
「お主、それだけの魔力を放出して穴を掘っているのか?」
「ああ、そうだな。」
「なぜ、穴を掘る?」
首をかしげるドラゴン。
「ああ、鉄道を走らせるためだな。」
「テツドウ?」
あーさすがのドラゴンも鉄道は知らないよな。
「……乗ってみるか?といってもその姿じゃ乗れないが。」
「そうか?じゃあこれでどうじゃ。」
そう言うとドラゴンが発光した。その光が収まると、そこには黒髪の少女が立っていた。
「ああ、人化か。」
「吃驚せんのか。」
ちょっと残念そうに言うドラゴン。
「だってなあ。」
俺はチラッとルナの方を見る。ルナは頷き人化した。
「ルナもできるから。」
「おお、人化のできるフェンリルとは珍しいの。」
ん?フェンリルって普通は人化できないのか?
「ふむ、お主、こやつ以外のフェンリルは知らんようだな。フェンリルにも人化できるものとできんものがおる。まあ、必要だから覚えるヤツか長く生きて覚えておくかレベルで覚えるもの以外は使えんな。」
「あーそうなのか。」
ということは、ルナは俺と一緒にいるために覚えたわけか。
「じゃあ、列車に乗るか。王都行きはまだ出てるからな。」
俺たちはドラゴンを連れて――――って、そうだ。
「ところであんた、名前は?」
「ん?我か。我の名はデルモファシカルドだ。」
「長いな、それに覚えにくい。覚えるまでは間違えたり省略したりするから怒らないでくれよ。」
「うむ、仕方あるまい。出きる限り早く覚えてくれよ。」
「善処する。」
こうしてドラゴンと共に王都に帰ることになった。
駅に着くとデルモは興味深そうに車両を見る。
「ふむ、これがテツドウと言うものか。」
「ああ、これは旅客列車で、乗客を運ぶための車両だな。他にも荷物専門の貨物列車がある。」
「ほう。で、こいつは強いのか?」
デルモは真剣な顔で聞いてきた。
「う~ん、強いとはちょっと違うかな。一度に運べる量は多いけど、それが強さには直結しないだろう。」
「……そうだな。だが我も牛を一頭は運べるがな。」
「こいつは、牛なら軽く2~300頭は一度に運べるぞ。まあ、適材適所だからそのまま比較はできんが。」
「そうなのか?」
首をかしげる少女。
「ああ、例えばあの山の頂上ならドラゴンで空を飛べるデルモなら簡単に行けるだろうが、鉄道では不可能だ。それに、鉄道のルートは決まっているから、そこから外れると馬車にすら負ける。だけど、決まった区間を大量に運ぶなら鉄道に軍配が上がるな。」
「……そうなのか。」
「ま、とりあえず座ろうか。もうすぐ発車するからな。」
俺たちは3等車のボックス席を2つ占有し(俺、ルナ、リーフ、デルモファシカルドの4人と《
「ふむ、たいして速くないの。」
「まあ、空飛ぶドラゴンに比べればそこまで速くないからなあ。確かジェット機の速さって音速を超えるんだっけ。だけど、おそらく地上を走る物の中なら速いほうになるぞ。といっても鉄道の得意分野は”大量の荷物を決まった場所まで一定速度で長時間かけて運ぶ”だから最高速度的には負けてもいいんだが。」
「そうなのか?」
「ああ、いくらドラゴンでも何日も飛び続けることは不可能だろう?」
「む、確かに。」
「鉄道はその気になれば数日ぶっ続けで走らせることは出きるからな。まあ、乗務員交代やら燃料補給やらあるからやらないけど。」
世界中に鉄道網を作ったとしても1本の列車をノンストップで走らせる予定はない。それに、夜中ぶっ通しで走る寝台列車でも途中で運転停車させる予定だ。
「……すごいな。テツドウっていうのは。」
感心してくれるドラゴン。まあ今はすごいって思ってもらうことが大事だな。
そうこうしているうちに列車は王都ドリス駅に到着した。
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