第4話 チート全開トンネル掘り(鉄)
領主代行との打ち合わせを行った翌日、俺たちはナンユウゲキとサイユウゲキの間に作るトンネルの建設予定地に来ていた。
「さて、これからここにトンネルを作るわけだが、」
「あのぉ、すいません。」
「どうした?」
今日は土木課の作業員が来ていた。その作業員の一人が声をあげた。
「はい、確かに鉱山とかではトンネルを掘っているのですが……。」
「断面の大きさと貫通の話だよな。」
「はい。」
確かに鉱山の坑道は基本人が通れる大きさになるが、鉄道トンネルの場合断面がでかくなる。といっても電車を通すわけないので断面積は少し小さくできるんだけど。
「まあ、心配なのはわかる。今までよほどの状況じゃないとトンネルという選択肢はなかったんだろ。安心しろ俺が俺の世界の工法をこっちの世界でできるよう考えた方法を試すから、大丈夫だ。」
「そうですか……。」
作業員たちは半信半疑っていったところかな。まあ、これから目にする工法は大丈夫だから安心してくれ。
「まず最初にこんなものを用意してみた。」
そう言って見せたのは1mの棒に円盤をつけたものだ。その円盤には方位磁石のような針がついており、円盤部は縦と横の両方に回るようになっていた。
「向こう側にもこれと同じものを立てている。これを作動させると……。」
そう言って魔道具を作動させる。そしたら、魔道具から1本の赤い光が崖の方に伸びていった。
「この先にもう一方の魔道具がある。このまま真っ直ぐ掘ればいいだけだ。」
この魔道具は1対しかないので、トンネルは1度に1本しか作れないけど基本俺が頑張るんで問題ない。
「建設はシールド工法を教えていこうと思う。この世界ではまだ生まれていないだろう工法だから、秘匿してね。」
俺はそう言うと壁に手をつき、魔法を使って1mほど鉄道用の断面積分掘り、その土砂を脇に置いた。そして、錬金魔法を使って土砂の一部をコンクリートブロックに変え、側部から天井まで覆った。そして、隙間に土砂を圧縮して詰め込んだ。
「こういう風に少し掘っては壁を作り、壁を作っては少し掘る。これを繰り返して穴を掘っていくんだ。ここではコンクリートブロックで覆ったけど、他の場所ならそれぞれの方法を模索していくことになるだろう。」
「いや、今みたいなことヤマト様にしかできませんよ。」
ん、そうか?やってることは単純なんだが。あ、そうか。
「別に一人でやる必要はないぞ。それに俺はチートだから土砂をコンクリに変えたが、事前に切り出した石を用意してアーチ状に嵌め込んでいってもいいんだ、石橋みたいにな。」
実際、石橋のアーチとトンネルのアーチは構造が全く同じである。
「じゃあどんどん作っていくぞ。」
そう言って、掘ってはコンクリで壁を覆い、掘ってはコンクリで壁を覆いを繰り返す。そうして50mほど掘り進んだところで一旦作業を止めた。
「坑道と違い鉄道の場合必ず作らなくてはならないものがある。それは待避抗だ。簡単に言えば万が一の時に逃げ込む穴だな。列車が来たときにトンネルの中にいると逃げ場がないんで、先に作っておくわけだ、こういう風にな。」
俺は壁に高さ1m半、奥行き1mの穴を掘った。
「この待避抗は主に君たち土木の人間が使うことになる。列車が来たらここに逃げ込むことを徹底すること。誰もボーッとしていたから死んだってことにはなりたくないだろ。」
「「「はいっ!」」」
「じゃあ今日は800mを目指し頑張るからよく見ておけよ。」
「「「「はいっ!」」」」
といっても、チートでのごり押しなので参考程度にしかならなかった。参考資料としては一級品ではあるが。
その後、俺は1分間に2mのペースで掘り進め、夕方には800mを掘り終えた。
「さすがにMPがつきかかったよ……。」
「ごしゅじんさま、おかえり~。」
疲れた顔をしてトンネルから出てくるとルナとリーフがいた。付き添いの冒険者も一緒だ。
「ルナ、リーフ、ただいま。」
そう言いながら俺は二人の頭を撫でた。
「今日は列車で来たのか?」
「うん、ルナより速くてビックリした。最初は遅かったけど。」
そら、フェンリルと比べれば瞬発力はないからなぁ。阪神のジェットカーですら加速度は4.5㎞/h/sだし、新幹線だと2.6㎞/h/sになる。機関車は……牽引する重量で変わってくるからなぁ。ルナは2~3秒で最高速度に達するからジェットカーより加速するはずだ。
※作者注:ジェットカーの加速度は5001形(2代目)までのもので、5500系以降は4.0㎞/h/sである。
「まあ、適材適所ってやつだ。ルナは1日中全速で走ってられないだろ、列車は機械だから整備さえちゃんとしていれば長い時間走れる。それに列車は小回りが無理だからいろんな所にいくときにルナがいると助かるよ。」
「うんっ!」
ルナが尻尾を千切れんばかりにブンブンと振る。だがその振った尻尾が隣にいるリーフに激しく当たってるんだが……。
「で、今日はどうしたんだ?」
ルナたち俺の従魔はマルサロア鉄道役員扱いでタダで乗れる。というか、俺が金を俺の会社に払って俺の元に返ってくるのであまり変わらない。別に別けてる訳じゃないので影響は最小だ。税金の分だけか?
「ごしゅじんさまが穴を掘ってるって聞いて来た。」
って犬か!いや、フェンリルは狼の最上種みたいなもんだから犬の仲間でいいのか。
「で、リーフは?」
「ごしゅじんさまがあなをほってるときいてきた。」
「同じかよ!」
って、アルラウネなら植物モンスターだから穴掘りに興味がある……で、いいのか?
「今日は掘り終わったから今日はこれから休むんだが……。」
「「え~~~~~っ」」
やっぱり二人揃って穴を掘りたかったからかよ。
「ともかく、今日は帰って休む…………!!」
「ごしゅじんさま!!」
「ああっ!」
俺とルナはその気配に気づく。北の方から強者の気配がこちらに向かってくることに気づいてしまった。はっきり言ってこの場であれに勝てそうなのはチートな俺くらいか。仕方ないな。
「ルナ、みんなを頼む。」
「ううん、ルナもごしゅじんさまと一緒に戦う。」
いや、あれだけの強者なら話が通じる可能性を考えてるんだがなぁ。しかし、MPが尽きかかった現状だと、いざというときにルナにいてもらう方がいいか。
「じゃあ、ルナ頼む。」
「任せて。」
「じゃあリーフがみんなを守ってくれ。ただし、危ないと思ったら逃げていいから。」
「わかった~。」
ルナは本来の姿である
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2023/3/21 20:59一部修正:加速度の単位に㎞が抜けていたので足しました。
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