第11話
最後におばあちゃんちに行った日の昼、僕は祐樹叔父さんとほかの親戚の人と一緒に釣りに出かけていた。その時の僕に釣りの趣味はなかったけれど、好奇心でついて行ってやってみることにした。親戚の中でも釣り初体験のおっちゃんがいて
「おっちゃんと寄くんでどっちが先魚釣れるか勝負な」なんて言いながら楽しんでいた。そんな中で祐樹叔父さんは釣り経験者として僕らに手取り足取り釣り方を教えてくれた。なんでも親戚の中でも随一の釣り好きでその上腕もいいらしかった。釣りを続けていてもそうそう簡単にはつれないわけで、おじさんズはお互いに話の花を咲かせていたが、そこには僕と同世代がおらず、一番年齢が近い人は四十三歳だった。とんだ限界集落である。一人、釣り糸の浮かぶ水面とにらめっこをし、そこに映る自分の顔が動かなくなってきたころに
「あんま今日は釣れへんな~、運がないやっちゃ」と祐樹叔父さん声をかけてくれた。
「おじちゃん」と話し相手が来たと思い目を輝かせながら返事をすると
「俺でおじちゃんって、ここにいるおっさんらん中じゃ一番若いんやで」
と笑ってごまかしていた。祐樹叔父さんはいつも気さくで元気な印象があった。そういう意味ではちーにいちゃんとは全く似ていなく、親子でないような気もした。そんな祐樹叔父さんとだらだら話していた中で少し叔父さんの反応がおかしかった話題があった。僕が
「ちーにいちゃんって今度はどこの学校に行くの?」と聞くと
「名前はよう知らんけどな~、なんでもこっちでは一番ええとこらしいで」と控えめな言葉ではあるが口調はとても誇らしそうだった。そんなことに小学生が気付くはずもなく、
「そうなんだ!やっぱりすごいんだね、ちーにいちゃん。おじちゃんも自慢でしょ?」と本心を述べた。すると虚飾のない子供の誉め言葉で気分の良くなった叔父さんは
「まあな、そりゃあ、俺の息子なんだからあたり目えよ」
と鼻を鳴らせた。腕を組んだ。目を閉じて上も向いた。
「でもお父さんは『別の県や東京に来て千景君はもっといい大学に行けばいいのに』っていってたよ」
僕のその一言でとっても誇らしくしていた祐樹叔父さんは一度こおり状態になったかのように静止して、低い声で
「そうなんか・・・・・・」
と何か思うことがありそうな表情を見せた。それが兄弟げんかの引き金だとしたら。
この件の燃料は僕だったことになる。
自分に責任がないと言いたいのが人の性ではあるが、僕には他の原因がわからなかった。
僕が悪かったんだ。
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