エステーザ防衛戦5 致命傷
魔法攻撃のすべてをシーラさんに充てれば、そう遠くない先には討ち取れる。隙を見せれば忽ち追い詰められそうな怖い相手だけど、牽制しつつ魔法を放つだけなら現時点での彼我の戦闘技術なら多分大丈夫。
ただ、そうしてしまうとそのわずかな時間でおっちゃんの所がヤバくなりそうだし、赤い人の所にも次から次へと雑魚がうじゃうじゃ集まってきている。定期的にこっちからフォローを入れないと数の暴力に蹂躙されるのは目に見えているわね。
それが強引に押し切れない理由の一つ。
「だから、なんだって……こんなに魔法を連発できる。」
それはね、1日に何回魔法を使えるか、とかどのくらい時間がたてば何回分回復するかみたいな術の回数単位の魔力運用じゃなくて、マジックポイントが幾つ残っていて、魔力消費がいくらの魔法をどのくらい使うか、時間当たり魔力がどれだけ回復するかって運用なのが理由かな。
大体この世界の魔法は一回発動するための最低限度の消費魔力がでかすぎる。牽制程度の魔法を使おうにも、全力を込めた魔法とたいして変わりない魔力を消費してしまう。その上術の難度が高いものだと魔法発動2回分、3回分と消費魔力がその効果に見合わず極端に上がってしまう。
ま、その分魔法使用の回復手段も色々極端な手段があるみたいだけど。
この辺はついさっき取った「この世界の魔法の常識1」から拝借している。だって、私が魔法を連発するたびに皆が呆れた様な、信じられないものを見た様な目で私を見るし、敵さんも大声で非難するからさ、気になるじゃん。
と、いうか結構安い経験値で手に入る筈の知識系列が、軒並み結構値上がりしているのは
「あり得ないでしょう!伝説に残る大魔法使いでも、1日に使える魔法の数は精々が20かそこら。20回目なんてもうとっくに40回目以上前に過ぎてるんだけど!?」
だからシーラさんのこの疑問は前提条件が間違っていたりする。伝説級の大魔法使いでも、確かに短時間で連発できる魔法の数は20発前後かも知れないけど、ある程度の時間とその他諸々が揃えばあの手この手で魔力を回復させてまた20発連発してきてもおかしくない。
大体伝承に残る大魔法使いの活躍って、一度の戦場を一つのサーガにまとめるから、同日の別の戦いに関しては別のサーガになっていたりして、その辺がちゃんと伝わっていないんだと思う。
ま、そんな魔力の回復手段のあれこれを手札にしている人や、知識として知っている人は滅多にいる訳じゃないみたいだし、秘匿技術だったりするからね。
世に一般的に流通している魔力回復の手段がないわけじゃないけど、これを利用して1日に何度も魔法を連発するのはコストや手段の希少性を考えれば現実的じゃないんだよね。手に入らないわけじゃないんだけどさ。
そんな感じで、ナギハさんやシーラさんの悲鳴のような疑問の答えが頭の中を流れていくけど気にしないで「
彼女達から見たらこの魔法は1回のカウントなのか3回のカウントなのか。
足元に小爆破を食らって体勢を崩したシーラさんの隙をついて「理力の弾丸」と「
ふと
けど、どうせ皆がどうなっているのかは教えてくれないんだろうな。
いや、それは良くない事だよ、うん。
「化け物が!」
シーラさんの後ろに控えていた青髪のロンデさんが、短く吐き捨てて準備していた術を発動する。自分でやっておきながら何だけど、正直、失った左腕が痛々しい。こんな事を言う資格なんか無いけど、見ているのがちょっと辛い。
「
ただ、段々とこの空気に慣れてきたからかな。どう動けばいいのかとか、どうすればいいのかとか頭の中には余裕が生まれてきている。先程仕入れた知識で、この世界の「
という事は、光弾が高速でうねうね軌道を変えながら飛来する光景なぞ、彼女たちも此方の陣営の兵士たちも見たことが無いという事で。よくシーラさん私の「
この世界の「
魔法をシーラに集中させる暇が無いなら、接近戦の技術を上げないと始末しきれないわね。
たださ、彼女たちを仕留めるのを
「
詠唱をサイレントに、トリガーワードにいつもよりも力を込めて私を中心としてある程度指向性を持たせた拡散する魔力の衝撃波を撃ちだす。魔力マシマシの高出力バージョンよ。
本来は射撃タイプの魔法や物理的な飛び道具を迎撃するのに向いている魔法で、当然攻撃にも使えるけど、拡散する性質を持っている為、遠距離では大した打撃を与えることは出来ない。手の届く位の近距離で被弾したら、一撃でオーガくらいなら昏倒するくらいの威力がある。
威力マシマシな私の一撃なら、近距離で被弾した時点で身体の軟部組織はミンチになって吹き飛ぶし、骨格あたりの固い部分もバキバキに破壊されて吹き飛ぶと思う。
最早別物になり果てた私の一撃に青髪さんの「
「ぐぅあぁああ!」「馬鹿な!私の魔法を打ち消しただと……。くっシーラ!!」
私の「
ついでにダークエルフちゃんも私の術の余波で、体勢を崩している。
私は殺っちゃうつもりだったんだけど、何となく空気を読むと、やらない方が良いんだろうなぁとは思う。たださ、やっぱり味方の命には代えてらんないよね。
思考は一瞬。
大地を吹き飛ばす勢いで蹴り飛ばし、引き絞られた弓から放たれる矢のように紫髪の美人さんとの距離を詰める。これが平和な理由で距離を詰めているんだったら、幸せな話なんだろうけどね。漫画やアニメの様に美人さんに飛び掛かる変態、撃退されて泣きぬれる男共。彼女にはそんなギャグシーンの方が似合うかな。こんな血みどろの世界じゃなくて。
ごめんね。生れ落ちる陣営が同じだったなら、もしかしたら私は貴方の友人になれたかもね。
スローモーションのように流れていく場面。ロンデさんの左腕を吹き飛ばした時の様に、魔力をスティレットに込め、私自身を弾丸にして突き抜けようとする、その一瞬。
「やらせるわけにゃいかんのよ!」
鏃と化した私の倍する速度で背後から襲い来る衝撃と、右肩が吹き飛ばされる感覚。そのまま錐揉みしながらシーラさんの右手側に大きくそれて建物に着弾する私。目の端に捉えられるスティレットを持ったままの肩先辺りで千切れ飛ぶ私のおてて。
不味い、これ致命傷だ。
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