ルツィーさんに相談だ! 厄介事がやってきた……
妹を迎えに行けるようになるまで、何年か掛るかもしれないと思っていたけれど、2か月足らずで少なくとも金銭的には準備が出来た。
以前までは焦燥感が少しづつ強くなって落ち着かなかった。一人で生きていく能力はある。宇宙船でも仕入れて、そこで一生引きこもっている事だってできる。だけど出来れば社会から離れて生きていくのはいやだ。だから、ギルドから性奉仕の仕事を強要され、他に逃げ道がない状態になるのが怖かった。
あれ、悪意という訳じゃなく、半分くらいは善意のつもりでやっているから、性質悪いんだよね。確かに何の保証も後ろ盾もなく、食べる為に街娼やるよりはマシなんだろうけどさ。
でも今は最低限の自分の立ち位置は確保できた。まだ私の立場は安泰だと言い切れるほどじゃないけど、社会に無下に使い捨てにされる可能性は少なくなった。
そして今は、私以外の誰か一人くらいなら支える事が出来る程度の、生活基盤を手に入れる事が出来た。
心が浮つくのを抑えきれない。
治療院からの帰りの為に迎えに来てくれた、護衛してくれる塒の仲間達に手伝ってもらって、皆にラットの串焼きを買って帰った。一人2本で計算して134本!合計、粒銀6個と銅貨28枚。大きな出費だけどお祝いだから、今日だけ特別。
彼方此方の屋台で串焼きをかき集め、サービスで大きな葉っぱで幾つかに包んでもらって、護衛の男の子達とニコニコ顔で塒に戻った。それが5日前の出来事。
翌日、午後のソロ狩りをお休みして、ルツィーさんに相談したのが4日前。彼女はちゃんと私の話を聞いて、色々と助言をしてくれた。妹を法的に保護するために必要な書類とか諸々準備して、私や妹に手を出さないだろう信頼できる冒険者を紹介してくれる約束をしてくれた。
直ぐに相手方の冒険者さんとは連絡がついたらしく、その日のうちに顔合わせする事になって驚いた。なんと昨日私が治療したリロイさんパーティーがルツィーさんのおすすめさんだったのだ。
まぁ、確かに女性中心で構成されているパーティーで、リーダーは男性だけど、その男性が他のパーティーメンバーに狙われているにも関わらず、今まで何事もなく切り抜けているのだから、そっちの方面では安心できるかも。
あんまり関わり合いになりたくはないんだけどね
流石ルツィーさんは優秀だわ。
彼らも事情があり、当面は魔の森方面の仕事を控えてお金を貯めたかったみたい。その事情に私も関わっていると思うので、気持ちはわかるよ。装備の修理や体調の調整もあるからという話で、1週間後に予定を立ててくれた。
私の家庭、妹の事情も理解してくれて。……特にハーレムメンバーの女性たちが強く共感してくれて、必ず力になると約束してくれたのが嬉しかった。リーダーさんも私の事情に憤慨してくれたけど、もしかしてリロイさん達、中央側の出身の方なのかな。
魔法使いのシュリーさんが、親権の剥奪、変更について少し知識があるらしくて、ルツィーさんと打ち合わせをして、自分にまかせてほしいと請け負ってくれた。
報酬は銀貨16枚。彼ら程の手練れ4人組を馬車を使って往復7~8日間拘束するには妥当と言える金額かな。少し安いかもしれない。家族に渡すお金が銀貨10枚位だと考えても、手元には200万円近くお金が残る計算になる。
もしシュリーさんに頼る事になって上手く行った場合は、別口でシュリーさんにもお礼を包んだ方が良いよね。冒険者は横の繋がりが重要だって話だし、他の魔法使いとつながりが出来るのは今後を考えると良い事だし。
後の生活もあるし成功報酬銀貨5枚なら……、失礼じゃない感じかな。そんなこんなを考えてその日一日を過ごした。
ニカに抱っこされてロナを抱っこして、それでもなかなか眠れなくて。いよいよだと、はやる心が抑えきれない。二人にはシリルの事については相談しているし、ケリーにも伝えてある。ニカは今度はシリルを抱っこするって笑っていた。
そうなるとニカがシリルを抱っこしてシリルが私を抱っこして、私がロナを抱っこするのかな。
そんな想像をしていたらつい笑いが漏れてしまって、ロナ達にどうしたのと心配されてしまった。何でもないよ。ちょっと楽しみだっただけ。
そして今、3日後にお出かけを控えて、気も漫ろなまま5日ぶりの治療院勤務の前に、ギルド南支部に呼び出されて院長先生に右手を切断された患者の相談をされている。
ここ数日、治療院にはその他にも何人か魔法治療を望む患者が駆け込んできていたみたい。リロイを治療した先生と連絡が取れるまで入院してでも待つ、みたいな冒険者の方も何人かいらっしゃるみたいで、今病室は満床に近い状態だそうで。
……やっぱりこうなったのね。
院長先生のあの言葉を聞いてから、まずったかなぁとは思っていたんだけど、まずったわね。
腕を切り落とされた患者さんは今朝がた運び込まれたようで、切り落とされたのは昨日の深夜。
腕には保存の粉と呼ばれるポーションの一種のパウダーが振りかけられ、布で包まれて持ってきている。この状態なら、接合する為の時間の余裕はまだあるみたい。パウダーをかけた上で
入院してまで私を待っていた患者さんは、リロイさんと同じように治療の際に激痛を伴う可能性が高い症状の方が多く、今回のリロイさんの噂を聞きつけて、態々ギルド直営のこの治療院に駆け付けたそうだ。
痛いのが嫌なのはわかるけど、態々治療を受ける日を後回しにしてでも、私を待っていたという所に、ちょっと情けなさを感じるよね。
待っている間も、激痛で眠れなかったろうに。
でも、激痛を避けて治療できるなら2~3日待っちゃうかもしれない。人の事言えないよね、私も。
話を聞くとリロイさんと同じような解放骨折2名と、足がひしゃげちゃっている人が1名。後は背骨がやられて全く動けなくなった人が一人。
うーん、気のせいか聞いただけで私まで痛くなってきたよ。
皆、支払い能力はある冒険者だから、その辺りは問題ない。これ全員治療したら一財産だよね。
ヤバイ。これだけで私、食べて行けるし、シリルに贅沢だってさせてあげられちゃうよ。
その内、稼ぐことじゃなくて使う事を考える必要が出てくるよ、これ。
折角のご指名だけど、腕の切断の件以外は救急じゃなかったし、私に負担を懸ける事を避けた院長先生は、私を呼びださなかった。呼び出しに出た職員を付けられて、術者の身元がバレるのも困るからっていう事情もあるみたい。
って事は私は余程のことが無い限りは救急で呼ばれないって事かな。
うーん、細かい所で迷惑をかけるなぁ。本当に早いうちに私自身の実力、特に戦闘力を世間にガツンと示して私の立場をしっかりと確立しないとね。
あたしに触れると火傷するぜ?みたいな感じで!
実力隠すなんてもう手遅れだから、どうせなら逆側に振り切れてしまうのもありかも。
ん?というと今から治療院に行くと真っ先に目を付けられるんじゃない?私。
院長先生にその辺の事を聞いたら、そこも問題はないみたい。院長先生と一緒に、何人かローブと薄衣を纏った職員さんがお供で出てきているから、その人のローブと薄衣と交換して治療院に入る手はずになっているんだってさ。
私と同じくらいの背丈の職員が、院長先生の隣で手を振ってくれたから思わず手を振り返してしまった。あ、は、は~い?
魔法治療の先生がご登場した後、私のローブと薄衣を着た職員が私に成りすまして治療院に戻るからバレやしないと太鼓判を押してくれた。
深夜や早朝に私を呼んだ場合は、そんな誤魔化し方じゃ難しいけどね。
では何の相談かと言えば、今朝運ばれた右腕を切断された冒険者さんのお話なんだそうで。なんでもそれなりの身分の方なんだけど、今は事情があって接合治療の費用を支払うだけの手持ちがないという事みたい。
身元は院長先生も保証できる人なんだそうだけど、どうしてもお支払いが後になってしまうらしい。普通ならそういう身分の方なら治療院が報酬を肩代わりする事もあるんだけどね。
今回の接合術は、切断面の損傷があって、単純接合では完治は難しいみたい。その場合の相場は銀貨200枚じゃきかないし、流石にそんな高額の報酬を治療院が肩代わりするのは難しい。というかそんな大金治療院なんかに置いていない。
院長先生も立て替えたいけど、嫁5人と子供多数を抱えて何かと物入りで、そんな現金は手元にもギルドにも預けていない。
後払いはトラブルの元という事で、本来は受け付けないけど、身元はしっかりしているし支払いの当てはあるから、今回は特別に後払いで仕事を引き受けてはもらえないかというお話だった。
……その前に聞いていい?院長先生、5人も奥さんもらったんかい!で、子供何人いるの?27人って、そりゃ確かにお金なんかいくらあっても足りないわな。
夏にもう一人産まれるんだ。へぇー……それは……おめでとうございます?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます