第8話

峠を下り、C地区に入り少し進むと、バイパスと呼ばれる片側2車線の

広い道へ出た。

その道をC地区の最寄駅方面に進むと大型ショピングモールや

ホームセンターが現れた。

そこをさらに進むと小奇麗な駅ビルが姿を現した。

片瀬は駅周辺で、駐車場を探したが飲み屋街が,あるのか見つからず、

駅ビルの中にあるバスターミナルのさらに上の立体駐車場に車を停める

ことが出来た。

車は立体駐車場の最上階部分に停車させた。

駅ビルから出た片瀬は駅前にある交番で「Αρθρωτό」のある住所を

教えてもらい、その交番から15分歩いて会社のあるオフィスビルに着いた。

10階建てのビルの3階にΑρθρωτόはあったが、エレベーターを使い

3階に行ったが、まだ、会社が開いていない事を確認してビルを離れた。

駅ビルへ一旦戻った片瀬はファストフード店でパンとコーヒーを買い

立体駐車に停めた車まで戻り、車内で朝食と仮眠を取った。

片瀬はタイヤのスキール音で目を覚ました。

駐車場内は滑り止めなのか、屋内だからなのか車がゆっくりカーブを

曲がろうが、スピードを出して曲がろうが、かなりタイヤの音が響く、作りに

なっており、このバスターミナルの立体駐車場にも利用客が駐車し始める

時間になっていた。

立体駐車場の最上部に車を停めたおかげで、始発から乗車するような

早い出勤の利用客に仮眠を邪魔されることなく、ある程度駅間周辺が

賑わう時間帯になっていた。

片瀬は、シートを起こし、3分の1程残っていた冷めたコーヒーを飲み干して、

車を降りた。

早朝に、行ったビルに行き3階にある「Αρθρωτό」を訪ねた。

ガラス張りの入口をくぐると、正面に「Αρθρωτό」と書かれており

その下に小さく「modular」それとカタカナ表記で「モジュラー」と表記があった。

そこは、受付の様になっていたが、人の姿はなかった。

仕方なく片瀬は、[すいません]。

と、声をかけたが誰も出てこなかった。

しばらく待っていると、ドアの閉まる音がして、「では、行ってきます」っと

声がしてスーツ姿の男性が姿を現した。

片瀬に気づいていなかったようで、「あっ」っと言って、咳払いをしてから

「いらしゃいませ。ご用件は?」っと言ってきた。

片瀬は身分証明書を提示し、自分が警察官であると事を伝えた。

「警察の方!」

「少々、お待ちください」

スーツ姿の男性は一旦奥に姿を消し、すぐにまた姿を現した。

「直ぐに、上司が来ますので」

と言い残し、男はガラス張りの入口から出て行った。

片瀬が入口から受付へ向き直ると、体格の良い、短髪の男性が現れた。

片瀬はもう一度、身分証明書を提示し、警察であることを伝えた。

男性は、名刺を出し、鈴木と名乗った。

昔、柔道をやっていたのか耳が変形していた。

片瀬はもらった名刺は手に持ったまま、鈴木が名刺入れをスーツに戻す

仕草を眺めていた。

「何か。」

鈴木は片瀬が、名刺をもらった姿勢で固まっていたので、眉間にしわを

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