第6話

夕方に押収物保管所にある黒のスポーツセダンの盗難車を借りて

捜査を開始した。

捜査を開始したものの、自分が今までどのように捜査に関わって

きたかを思い知った。

地道な聞き込みなど、数える程しかやった事がなく、日々を過ごして

きたかを、改めて痛感した。

しかし、この機会に片瀬にはやりたい事があった。

それは、銃の押収率が下がった事で、銃が国内に無いなんて到底、

思えなかった。

なぜなら、日々銃撃戦を街中で、やっているからに違いなかった。

片瀬は銃は、まだまだ国内に存在すると確信していた。

片瀬は、自分が参加した過去数ヶ月の銃撃戦を起こした組織を

もう一度調べることにした。

本来なら、小林に資料を作らせて、片瀬が参加していない様な所も

しらみ潰しにといった感じだが今回は、そうもいかない。

自分の記憶を頼りに、黒のスポーツセダンを走らせた。

A地区にある、組事務所を張り込んで様子を伺ったが、組事務所に

逮捕される様な物を置いているはずも無く数時間を過ごした。

A地区に見切りをつけてB地区に向かう道すがら、信号待ちをしていると

黒塗りのバンが交差点を通り過ぎた。

黒塗りのバンは、法定速度を守り、怪しい所はなかったが、何故か

片瀬はそのバンに違和感を覚えた。

信号が変わり、片瀬は黒塗りのバンを尾行し始めた。

片瀬の前に2台の車がいたおかげで、尾行の発覚の可能性は

低かったが30分も走ると、流石にバンとの間にいた車も居なくなり、

車間距離を取ることにした。

車は、農村地域に入り車間距離は300mほどまでになっていた。

農村地域を抜けると峠に差し掛かった。

片瀬は、尾行の発覚の可能性は、上がるが車間距離を縮める事にした。

普段なら運転は小林が行い、車両間隔の支持や対向車など周辺の

状況確認を片瀬が行うが今回は一人で車両の尾行という事もあり

今の車間距離では、追跡車両がカーブを曲がり、Uターンして反対車線へ

進路変更されても気が付かない可能性もあると考えたのだ。

車間距離を黒のバンのテールランプがカーブで、見えるまでに縮めた。

峠の中腹に差し掛かったところの上りカーブを抜けると、その先の道は

200mほどの直線だった。

そこで、バンは100m程先の右車線の路肩に車を停車していた。

片瀬は尾行に気づかれていないか、右目で確認しながら路肩のバンを

通り過ぎた。

幸いバンを運転していた方も車から降りている方も気づいていいない

ようだった。

1人は、運転席に乗ったままだったが、もう1人は鉄柵についた鍵を

開ける為、道路に背を向けていた。

バンをやり過ごした片瀬は100m先にあるカーブを曲がり、用心の為に、

ライトを消し、反対車線にUターンをして、エンジンも止めて、バンが

停まっていた場所まで下り坂の惰性を利用して門の前でセダンを停めた。

バンは既に鉄柵を閉じ門の先の急こう配の坂を登ったようだった。

片瀬は車を降りて、黒のバンが登って行った鉄柵の前に立った。

鉄柵には、御丁寧にも鍵がかけられていた。

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