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「まあね。だって、ずっと二人でやってきたの。要に引き取られてから6年経つし、その前だって要だけは私がどこに連れてかれてても会いに来てくれた。随分あっちこっちやられてたんだけど、私がどっか行くたびに捜して会いに来てくれたの。」

 さらりと、結構重たい記憶を披露された。

 俺は一拍妙な間を開けてしまってから、取り繕うように明るい声なんて出している。

「要さんも梓ちゃんを大好きなんだね。」

 へぼな回答をした自覚はある。子供番組の歌のお兄さんでもあるまいに。

「そう。ロリコン気質なの。」

 ふざけたように梓ちゃんは笑い、ポテトを数本まとめて口に放り込んだ。

 その仕草は幼げでも、目元が俺よりずっと大人びている。

 この子はいつもそうだ。俺の失態に気が付いていないふりをしてくれる。そしてその時の態度が、驚くほど大人びている。

 だから俺も、大学の校門で待ち伏せしていた彼女に言われるがまま、ファストフード店までついて来たのだ。一見生意気な立ち姿や強引な物言いも不快には思えず。

「よく食べるなって思ってるでしょ。子どもの頃碌に食べられなかったから、食い意地が張ったみたい。」

 やはり重たい内容を笑いながら告げる。そのときだけ、この子はちょっと危ういな、と思わせる。年相応に幼いし、脆い部分があるのだな、と。

 だから余計に、無視して帰るわけにはいかない気になる。へまな回答しかできない俺でも、いないよりはましかなと。

「よく食べるから、見てて気持ちいいよね。」

「あなたもロリコン?」

「もうロリって歳じゃないでしょ。」

「ずっとそうだったら楽だったんだけどね。」

「え?」

「そしたらずっと要といられるし、こんなふうに要の心配なんてしなくていい。子どもは大人に甘えてればいいんだから。」

 随分開けっ広げな子だな、と思った。俺だったらそういった類の自分の内心を他人に話すことはできない。とくに、こんな明るい場所でほぼほぼ初対面の相手には。

 だから要さんは、俺にとってかなりイレギュラーな人だったということになる。あんなふうに行きずりのセックスみたいなことをしたのも生まれて初めてだった。俺はなぜだか、要さんのことをかなり深く受け入れようとしていた。受け入れても傷つかないのではないかと思っていた。

 多分、要さんがはじめから俺に自分の異常さを隠さなかったからだろう。兄貴の部屋で手錠につながれていた、なまめかしい人。

 またそんなことをぼんやり考えて、会話に居心地の悪い穴をあけた俺に、梓ちゃんはちょっと眉を寄せて微笑んだ。

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