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次に要さんと会ったとき、彼は制服姿の女の子を連れていた。

 チェック柄のプリーツスカートを短くして、第二ボタンまで開けたワイシャツからは銀の細いペンダントが覗いている。長く伸ばした髪はきれいな栗色に染められていて、その下からちらりと見える薄い耳たぶには、ペンダントと揃いの銀のピアスが光っていた。

「このこが梓ちゃん。この人は、夏来くん。」

 なんでもないことみたいにさらりと、要さんはごく簡単な紹介をした。

 要さん一人に会うつもりでまたターミナル駅まで来ていた俺は、戸惑いながらも梓ちゃんに向かって軽く頭を下げた。

 数秒後、梓ちゃんも俺と同じ仕草を見せた。見た目ほどやんちゃな子ではなさそうだった。

 今日はラブホに行かないんだな、と思った。前回会ってから、まだ一週間しかたっていなかった。

 がっかりした、というわけではない。セックスしたくてここまで来たのではない。ただ、また要さんに話したいことができただけで。

 ただ、その話したいことも、兄貴と俺と要さんの肉体関係に纏わることだから、この女の子の前では到底話せない。その部分では、がっかりというか、戸惑いがあった。

「俺がいかれてるかどうか、知りたがってたでしょう。だから来てもらっちゃった。あずちゃんが一番俺には詳しいから。もうちょっとしたら、塾に行かないといけないんだけどね。」

 ね、と要さんに顔をのぞかれた梓ちゃんは、にこっと八重歯を覗かせて笑った。

 ますます、見た目ほどやんちゃではなさそうだった。

「そうだね。要のいかれてるとこなら、私が一番詳しいよね。」

 やんちゃではなさそうだけれど、ちょっと生意気っぽい感じはあった。それも、可愛らしいに収まる範囲のようだけれど。

 そのまま俺と要さんと梓ちゃんは、この前と同じコーヒーハウスに入った。

 要さんはブレンドコーヒーを、俺はレモンティを、梓ちゃんはミルクティを注文する。

「ほんとに私、要のいかれてるところ話すためだけに呼ばれたの?」

 梓ちゃんは俺と要さんとを見比べ、頷く要さんの肩を軽く小突いた。

「私だって受験生なのにさ。」

「ごめんごめん。」

「要ともう五年以上一緒に暮らしてるから、当たり前みたくなって、いかれてるとことかだんだん分かんなくなってるけどね。」

「え、そうだったの?」

「そうだよ。」

 ぽんぽんと梓ちゃんと言葉を交わす要さんは、これまで見た要さんとは別人みたいだった。なんというか、真っ当な人みたいだったのだ。真っ当な人、真っ当な保護者。



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