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いかにもラブホテル的な外装のラブホテルは、部屋に入ると案外普通のホテルみたいだった。ベージュでインテリアが揃えられていて、なんなら居心地もいいくらいだ。
俺と要さんは、交代で手早くシャワーを済ませた。なんというか、とっとと抱き合わないことには、今ここに確かにあるセックスするムードみたいなものが、あっさり霧散していきそうだったのだ。
俺は男の人とセックスしたことがない。強姦されたことはあるけれど、あれは俺の意志ではなかった。
対して要さんは、男との行為に慣れているみたいだった。
「時間ないから、今日のところは挿入なしね。」
と、さくっと俺に言いわたし、どうしていいのか分からずに備え付けのバスローブを引っかけて呆然と突っ立っている俺の手を引いて、ベッドまで連れて行ってくれた。
「無理そうだったら言って。我慢しないでいいから。」
俺をベッドに座らせ、すぐ隣に自分も腰を下しながら、要さんが俺を安心させようとしてかそっと口元で笑う。室内の若干暗い灯りの中で見ると、やはりこの人はちょっと驚くくらいになまめかしい。
俺はがちがちに緊張していた。女の人とはしたことがあるし、ラブホテルに入るのもはじめてではないけれど、相手が要さんだと思うとどうしようもなく緊張した。
兄貴とは、結局したんですか。
時間稼ぎみたいにかなり無粋な質問をしようとした唇を、要さんのそれが塞いだ。
唇の感触も、舌の温度も、唾液の味も、女の人と変わらなかった。強いて言えば、舌が厚くて長いような気がするくらい。その舌に口の中をそっと探られるのは、これまでしてきたキスの中で一番気持ちがよかった。
慣れてるんだな、この人はすごく。
若干酸欠気味の頭で思いながら、要さんの黒い長めの髪に手の指を埋めた。要さんも俺の頭をぎゅっと抱いて、そのまま背中からベッドに倒れ込む。
兄貴とも同じことしたんですか。
問おうとするたび、絶妙なタイミングで口を塞がれた。キスや快楽で、必ず。
俺は要さんの手と口で一回ずついった。
手の大きさも感触も女の人とはもちろん違ったけれど、気にならないくらい要さんは手馴れていたし、上手かった。人の手で、こんなに早くいってしまったのははじめてだったし、要さんの口の中は手よりももっと気持がよくて、これまでの女の子たちはみんなその逆だったから頭が少し混乱した。これをフェラチオと呼ぶのなら、これまで口でしてもらった行為は全部、なにか違う名前で呼ぶべきだと思ったくらい。
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