ダイ3ヮ おさんぽ
鳥が鳴いている。
今日は昨日とは違い雪は降っていなかった。
一番不思議なことは今の時刻が朝の5時だということ。
そしてもう一つの不思議が窓を開けたこと
「おはようございます!!きょうの天気は......」
天気予報を見たのなんて遠足以来。
なんだか朝から心が軽くていつも飲んでいる薬を飲まなかった。
チュン、チュンと鳥が鳴いている。
チーンとトースターのパンの焼ける音。
日常のようで
特別楽しかった。
よし早く着替えて早く家を出よう。
こんなことになるのは小学生以来だった。
リュックを背負い靴紐を結んで音のならないイヤホンをつける。
「いってきます...」
つぶやくように言った私の挨拶に母は微笑み優しい顔で
「いってらっしゃい。」
自転車にまたがり、片耳のイヤホンを外した。
スマホのロックを解除する。
そしてある人気バンドの曲を流す。
風が気持ちよく感じた。
風の音、車の音、川の音、生活の音、全てが新鮮に聞こえた。
かなり時間があったので公園によった。
久しぶりにブランコに乗りたくなったからだ。
ブランコに乗っていると犬を連れたお姉さんが近づいてきた。
といっても40代くらいの人だった。
「あなた、今日は早いのね。」
とても優しそうにほほえみ話しかけてきた。
いつもの私なら走って逃げていただろう。
でも今日は
「鳥が起こしてくれました。」
と答えた。
お姉さんさんは笑いながら
「可愛い子!私も最近体調が悪かったんだけど、久しぶりに朝の空気ワンちゃんと吸いに来たけどやっぱりきもちいいねー!!」
私は
「とても美味しいです。とても...」
泣いてしまった、理由自分でも良くはわからなかった。
昨日から何かがおかしい。
お姉さんさんはとても心配そうに
「大丈夫、あなたは強い子よ。」
昨日から訳がわからない。
大丈夫だよだの、一人で抱え込むなだの、ありがとうございますだの、
私の何がわかるんだよ。一体何をわかって大丈夫って言えるんだろう。
自分だって他人の気持ちなんてわからないし、はなからわかろうとなんてしていない。
ほんとに最低な人間なんだ。この人も本当は鬱陶しいって思ってるかもしれない。
昨日だって、科学の先生も、クラスメイトも、同級生も、先輩も...
昨日の男の子も私のことを嫌っていて、、全てが怖くなる。すべてのものが、全てのものが怖い。
パニックになってしまったのだ。
だがお姉さんは
「私は貴方の名前も、性格も知らない、でも一つ言えることは生きることって素敵なことよ。もしかしたら今の人生が辛いかもしれない。だとしてもきっとすてきな人に出会えるときがかならず来る。私が保証するわ。だから胸を張って学校に行ってらっしゃい!!私の分もしっかり生きてね!!」
初めて出会い、はじめて 話したというのにここまで優しくされたのは初めてだった。
一つ引っかかることがあった。聞いたらだめだと思ったのに、
「私の分ってどういうことですか??」
やってしまった。ゆってしまった...
「私ね癌なの。もう治せない」
笑いながら言っていた。
「え?」
私は驚きを隠せなかった。
「だからね、伝えたい人に伝えたいことしっかり伝えるのよ。私はもうできなくなっちゃうけど。生きて。貴方には未来がある。」
本当に強いのはお姉さんだ。
「早くしないと遅刻しちゃうよ!!早く学校行って来い!!」
「い、いいいってきます!」
今日も憂鬱な一日が始まる。
だが少しいつもと色の違う一日だ。
また自転車にまたがり手をふるお姉さんに会釈をする。
「がんばれよー」
彼女はそう言いブランコを漕いだ。
雪解け ももかっぱん @momokappatyan
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