第12話 ファントムセンス

私はVRゴーグルをつける、新しくゲームマシンを買えたので

前から興味のある、VRを楽しむ事にした

「ちょっときついかも」


コントローラを握りマシンを起動すると、メニューが出てくる

私はガイダンス通りに進めると、自分の部屋に入れた

ゴーグルをつけているので、リアルな部屋を見る事はできない

見えているのは、仮想空間上の部屋だ


私は操作に慣れるため、練習をする

何日か続けた後に、私は外の世界、みなが集まる場所に移動した


様々なキャラが居る、話し声も聞こえる。

「君は新人?」二足歩行の猫が声をかけてきた

「ええそうです、私は初めてでわからなくて」


そうやって毎日を過ごすと、知り合いも増える

同じ趣味の人に誘われて、個室で話す事もある

仮想でも普通の付き合いだ


ある日、私は腰を触られた。

見ると小さな子供のキャラが、ふざけて自分のキャラに触っている

腰の部分だ

驚いて逃げ出した


VRを終了して、ネットで調べてみる

『ファントムセンス』と呼ばれる現象だと判る

自分がVR上で触られると、本当に触られたと思い込むらしい

一種の錯覚なのだろう、それだけ自分のキャラで長く暮らしている


昔から幻肢痛のように、無くした手足が痛む事がある

VR上でも発生したのだろうか。


「君はいつも冷たいね」

あの猫がまた話しかける

「予定があるから」いつもは断ると引き下がるが今日はダメだ

「君はVRセックスに興味ある?」

しつこく私を誘い始めた


道具を使ってお互いを慰め合う事が出来るという。

想像すると嫌悪感で感情が爆発した

「いい加減にして」私は猫を突き飛ばす。

物理演算は現実を模倣する、猫は重心を崩して倒れた。


猫はそのまま動かない、どうやら転んだ拍子に

ネットが切断したのかもしれない

私は猫を置いて予定の場所に行く。


「今朝のニュースです、VR中に男性が死亡しました」

TVから流れるニュースを見て気になる

仕事が終わると、私はVR空間に入る


知り合いが猫キャラが死んだ事で噂をしていた。

誰にも理由は判らない、私はファントムセンスを思い出す

触られる感覚があるなら、地面に激突した感覚もあるのではないのか


私は怖くなり、VRをやめる事にした


布団にもぐると、すぐにうとうとしてきた

そして夢を見る、VRに自分が入る夢だ

VRの不思議な空間を歩いていると、猫キャラが居る


私を恨めしそうに見ながら追いかけてきた

走って逃げる、そうだ私は実際に布団の中で足を動かす

リアルを感じる、目が覚めそうだ

助かると思った瞬間に、猫が私の首をしめた。


「何日も連絡が無かったので大家と連絡を取りました」

会社の上司が警察の質問に答えている。


警官は、首に皮下出血を確認した

「ものとりでしょうね、

 首をしめたあとに鍵を閉めて出たのかも」


布団の上で『男性』が死んでいる。

ファントムセンスを強く感じた彼は、夢でも同じ感覚を

得たかもしれない。

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現代風のSS集 WsdHarumaki @WsdHarumaki

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