第6話 勧誘員
「こんにちわ、いらっしゃいますか」
旦那を送った後に、玄関が叩かれる。
無視をしていると、また叩かれる
面倒だが追い返す事にした。
結婚から10年を越えて、子供も作らない事にしている
旦那に育てる自信が無いと言われると
反論はしようがない。
「新聞ですか?いりませんよ」
30代くらいの同年齢の男性が立っている。
「奥さん、新聞はいりませんか」
「いりません」
若いがやさしい顔立ちで、すまなさそうにしていると
無下に追い返すのが、かわいそうに感じる
欲求不満なのかしらと思う事もある
勧誘員は少しためらうと
「奥さん、お食事にいきませんか」
唐突の申し出に面食らうが、抵抗感はまったく無かった。
旦那とは何年もしていない
胸の奥のどこかで火がつく
お金が無いと思うから、安い店ですませる事にする
「鍋焼きセットで」
「もっと高いのでいいですよ」
勧誘員は、山内と名乗る。
気まぐれでOKをすると、本当に迎えにきた
別にデートでもないので、薄く化粧して出かけた
「ねえ、あの男達は後ろからついてきてなかった?」
店の中で、場違いな男が二人居る
ハゲ頭でサングラス、明らかに反社に見える
「すいません、ボディーガードです」
山内の話を要約すると
父親が組長で、自分を守るという名目で居る。
組を継がせるために自覚を持たせたいのだろう。
「継がないと言っても聞いてくれないですね」
ボディーガードをつけることで、普通の職業に就職できないと
ぼやいている。
「あなたも大変ね」
食事をした後は自然にホテルに行く、怖さは無かった。
彼の血なのだろうか、女性を支配するような魅力がある
不倫の意識も無い。
旦那とは、もうそんな関係では無くなっていた。
夜に帰ると旦那が待っていた
「どこに行ってた」
「食事よ」
旦那は、疑わしい目を向けながら不倫だろうとなじると
殴り始める
こんなに嫉妬深かっただろうか、私は部屋から逃げた。
外に出ると、ハゲ頭のサングラスが待っている。
「後はこちらで始末をつけます」
事務的な言葉に、恐怖を感じた。
山内がいるアパートまで連れて行かれると、彼が驚いたように
私の顔の傷を心配した。
その日から彼の部屋で過ごすことになる
「もうあなたの部屋に戻る必要はありません」
ハゲ頭のサングラスは、そう報告すると最低限の荷物を
運び込んだ。
それからは、山内の内縁の妻のままで過ごし、
旦那は行方不明で離婚が成立した。
警察や実家からの問い合わせも一切無い。
山内はそのまま組長になり、私は子供も出来て幸せだ。
「組長、終わりましたね」
「ああヤクザの世界で生きていける女は、品定めしないとな」
「電話で旦那に、不倫の件を告げときましたよ」
組長は満足そうに
「旦那を殺した事で、妻を守る覚悟がついたからな」
ヤクザの組織に入るための勧誘は成功だ。
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