第8話:あの日の忌まわしき出来事

それは昔の話。

今の僕は覚えていない。

ただ、今の僕のルーツになる、そんな事件。


3月14日

その事件は起きた。


俺は昔、この地域奈留他県に住んでいてを境に、唐大阪とうおおさかに移り住んだのだ。


それは雷雨のことの出来事。

昔、大野さんが僕の家に泊まりに来ていたときに起きた出来事だった。


その日の天気は曇りで、今にも崩れそうだったが、夜に文字通り雷雨となった。

そして、真夜中に大野さんと一緒に寝ていたときに雷が近くに落ちたのだ。


そのことについてはどうでもいい。

問題はその後だ。

その雷の光で起きた俺は外の様子を見ようとカーテンを開けた。


そこで見たのは雷の稲妻―――ではなく、その光で照らされた刃物を持ってる何者かの姿だったのだ。


それを見た俺はまだ小さかったので、驚いた大野さんを連れて、元の家に帰るように親に言われ、送ってあげた。


再度言うが、僕は小さかったので、その行動が愚かしいことなんて知らなかった。

何も無いなら良かった。しかし―――事件は起きてしまった。


送る途中、俺たちは橋を渡る必要があった。

川はかなり増水しており、いつ溢れてもおかしくないような状況だった。


「こわいね…須藤くん。」

「大丈夫さ。俺が居たら君を守ってあげるから!」


俺は威勢よくそう言ったはいいものの、やはり俺も子供で、心底怖かった。


よく考えればなかなかやばい状況だ。

小さい子が二人そして、ものすごい雷雨でロクに周りも見えないようなときに他の家に行こうとしている。


それは紛れもなくにとって大チャンスだったのだろう。


橋の直前、俺は妙な胸騒ぎがした。

なので俺は後ろを確認するため、ちらっと後ろを振り向いた。


そこには――――紺色のパーカーを着たいかにも怪しげな人が立っていた。


俺は本能で、危険だと悟った。


「麻衣ちゃん!!急いで逃げて!」

「へ?」


そう言い俺は傘を大野さんに託し、俺は橋に立ち男をあっちにはいかせまいと仁王立ちした。


……今思うとあの行動は良くなかったのかもしれない。


俺が仁王立ちしてすぐに男はこちらに突進してきた。


幸い俺は合気道を習っていたため、躱すことができた。


ただ、俺はそいつに捕まり――川に投げられた。


「須藤くん!!!!!」


意識が途切れる中、そう最後に聞こえた気がした。


そうして意識の失った俺は、増水した川に流されていった。

幸いだったのは増水したおかげで川底の石にぶつからなかったことだ。


それにぶつかっていたなら、俺は間違いなく死んでいただろう。

俺は悪運が強かったらしい。


そして俺は唐大阪の真野川しんのかわまで流され、今のお母さんに拾われた。


しかし、俺は記憶の大半を失っており、思い出せることといえば、




名前は須藤彼方すとうかなたということ。



そして、奈留他県に住んでいたことくらいだった。

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