第6話:大野さんの家
「はいっ!着いたよ!ここが私のお家だよ!」
ここが大野さんの家……?
おかしいな。すっごい既視感があるんだけど……
当たり前だが、俺は大野さんの家に来たことなんて一度もない。
なんなら、転校してきてからが初顔合わせのはずだ。
……いや、気の所為…だよな?
まあとりあえず…
「お邪魔します…」
「はい!どうぞ〜!」
ニコニコとした笑顔で俺を迎え入れてくれた大野さんはまるで天使のように見えた。
(ああ…純白の羽が見える…ところどころ黒い羽が混じってる気がするけど…)
「……?とりあえず上で待ってて〜。」
「わかった。」
そうして俺は二階に上がったのだが、ここで問題が発生した。
なんと、二階に部屋が2つあったのだ。
「…どっち入ればいいんだ?これ。」
とりあえず思い切って開けてみよう!
……えい!
扉を開けると―――服やズボンなどが吊り下げられている部屋だった。
いわゆるクローゼットみたいなところだ。
俺は申し訳ない気持ちがこみ上げてきたので、扉を閉めるため下に目を向けた。
すると、そこにはタンスの中から少しはみ出ている女物の下着が見えた。
刹那、俺は全力で扉を閉めた。
なぜなら下着が入ってるタンスには「麻衣」と書かれていたからだ。
…あれは見なかったことにしよう。
そうして二階のもう一つの方の部屋に入って待っていた。
しばらくすると、大野さんがドタドタと走ってきて言った。
「はぁはぁ……須藤くん、あっちの扉開けなかった⁉」
「い、いや開けてないけど...。」
本当は開けた。
すこし、いやかなり罪悪感を感じた。
しかしそれを正直に告白すると、俺の評価が『家に入れてもらってる身で無神経に部屋を開けるやつ』となるからだ。
「そう……ふぅ、なら良かった…」
そして大野さんは何事もなかったように一緒にクッションに乗って雑談を始めた。
ワイワイと盛り上がっていると玄関から開く音がした。
「ただいま〜。」
「おかえり〜。おねえちゃん。」
へえ〜以外だな。大野さんにお姉さんがいるなんて……ってええええ⁉
まさか、このタイミングで帰ってきたのか⁉
「麻衣〜?誰か来てるの〜?」
「ふぇ⁉誰も来てないよ!?」
そう大野さんが言うと扉が開いた。
そこには大野さんのお姉さんらしき女性がいた。
大野さんに良く似ていて美人だ。
すらっとしていて、髪は特に結んでいない大野さんと対象的に後ろでくくっていた。
「ならこの靴な〜んだ?」
「……あ、お邪魔してます…」
「はいどうぞ。それと麻衣。初めてできた彼氏は大事にしなよ〜?」
「なっ!おおお姉ちゃん!彼氏じゃないもん!お友達よ?」
「はいはい。」
そう言い残し、お姉さんは扉を閉めた。
「ごめんね須藤君。うちの姉が無神経で。」
「いやいいんだよ。」
そういったのは良いものの、あながち否定出来ないのが辛いところだ。
俺はそう感じたまま、また雑談が再会するのだった。
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