第3話:勉強会の次の日の授業

大野さんが家に来た日の翌日。


教室のドアを開けて席に座ると、大野さんが近くに寄ってきて、ニヤニヤしながら聞いてきた。


「昨日の本はどうなったの?」

「っは、はあ?そんなんなかったよ⁉」


思わず慌て声になってしまった。


「へ〜そうなんだ〜あれは見間違えだったんだ〜」

「そ、そうけど?」


俺はそう言ったのだが、大野さんは徹頭徹尾、にやけていた。


キーンコーンカーンコーン。


チャイムが鳴った。


「全員席につけー。」


そう言って先生は扉を開けて入ってきた。


そうして何事もなく授業が進んでいると、大野さんが急に顔を近づけてきて言った。


「消しゴムでドミノを作ってみてよ。」

「え?そんなんバレたら怒られるぞ?」


この人は何を言っているんだ?


すると大野さんはスマホを見せてきた。

画面を見てみると――――


(な……これは……⁉)


例の薄い本性書の表紙の写真だった。


「頑張ってみよっか?」

「はい……」


(悪魔だこの人!)


俺はそう思いながら消しゴム百個(大野さんからもらった)を使ってドミノを作っていった。


(大野さんの筆箱は四次元ポケットなのか…?)


そんなことを考えながら。


そんなこんなで苦心しながらも、百個全てを並べ終わった。

そして、


「よく頑張りました!」


と大野さんが褒めてきた。


(うわぁ〜あんなに大変だったのに1ミリも達成感がない!全く嬉しくない!)


ふと、大野さんはこっちの席に寄ってきて、あろうことかドミノ苦労の結晶を倒してしまった。


1分くらいダダダダと音が教室に響いた。


「何だ?だれか遊んでいるのか!?」


ヒィ!見つかった!


横を見ると大野さんが必死に笑いをこらえている。


……後で覚えておけよ!


「すーとーうー?」


ひぃ!忘れてた!


「貴様なぜ授業中に…ド、ドミノをやっているんだ!」

「すいません!」

「これは没収だ!」

「はい....。」


まあこれは俺のじゃないけど。

横を見ると大野さんが更に顔を真っ赤にして笑いをこらえていた。


……最悪。


キーンコーンカーンコーン


終了のチャイムと同時に俺は先生の元へ取りに行った。


「二度とあんな事をやるんじゃないぞ。」

「はい....。」


席に帰ると大野さんがお腹を抱えて笑っていた。


「ひどいよ!大野さん!」

「ひーひー。面白かったね?」


くっそ、次は覚えてろ!

そう心に誓ったのだが、俺がそんな事をできるはずもないんだよな。


自分の意思の弱さに我ながら呆れるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る