第1話:授業中の大野さん

キーンコーンカーンコーン。


相も変わらず、けたたましくうるさいチャイムが鳴って授業が始まった。


「えー。これがこうなってああなるのでこうなります。」


……なるほど、分からん。

もう少し詳しく言うと、言ってる意味がよくわからん。


俺は一応平均点を取れているが、頭がいいと言うわけではない。

だから、必死に解いてるのに....。


「す~。す~。」


(横から寝息が聞こえるのはなんでだよ⁉)


ふと、横を見ると―――――大野さんが教科書を立てて寝ていた。


……え?

いや、まさかな。


まさか転校初日の最初の授業で寝るなんてことは……


「す〜す〜」


……あるらしい。


ていうか、普通転校初日の初の授業で寝る!?


俺がそう思った瞬間、大野さんが急に起き問題を解き始めた。


大野さんのノートをチラ見してみると―――


(こ、これは……)


僕は脳内の処理が追いつかなかった。

なぜなら、全部間違っていたからだ!


(嘘だろ⁉大野さんって勉強出来ないの⁉)


……まさか、大野さんがこんな勉強できないなんて思っていなかった。


見た目があれだけきれいなのに―――いや、見た目ですべてを判断してしまったのかもしれない。


しかし、解いている姿は美しい。……答えさえ合っていたのなら。


大野さんにその事を伝えようか迷っていた、その時。


「おーい。須藤!この問題解けるか?」


僕が当てられたらしい。


「っは、はい!」


頭では全く別のことを考えていたせいか、素っ頓狂な返事をしてしまった。


横を見ると大野さんが俺の方を向いて笑っている。


「ふふっ!」


笑うなよ……自分がも解けないくせに…

だが、今は泣き言を言ってもしょうがない。


俺は前に出て黒板に答えを書いた。


「よしっ。正解だ!」

「ありがとうございます。」


良かった、合ってた。

……説明理解していないなんて言えないが。


「次は〜大野!これ解けるか?」


「はい!」


おいおいおい!

あいつやばいんじゃないのか?


(……仕方ない……これは貸しだ)


そう思って、俺は大野さんがよそ見をしている間に、ノートの答えを書き換えてやった。


「よし!正解だ!大野、流石だな〜。」


…ま、俺のおかげなんですけどね。


キーンコーンカーンコーン。


終了のチャイムが鳴った。


すると、急に大野さんがこっちの腕を掴んだ。


「ちょっとこっち来て!」


何事かと思ったが、僕はとりあえず大人しく連れて行かれることにした。


僕は大野さんに連れられ、屋上へと続く階段に来た。


ここは人が滅多に人が来ない。


すると大野さんが口を開いた。


「その…さっきはありがと。私の答え、書き換えてくれたんでしょ?」

「え?あ、ああ。そのまあうん。そうだけど?」


バレてたのか。


「ありがとね。正直私、あんまり頭が良くないのよ。」

「意外だね。女子は頭全員いいのかと思ってたよ。」


「あっっははははは。さすがにそれは偏見だよ?…そうだ!今度須藤君のさ家で勉強会しようよ!」


唐突だな。

まあ僕は部活にも入っておらず、毎日暇を謳歌している。


「え?ああ、まあ良いけど。」

「約束ね!今日行くから〜。」


そう言い残し、彼女は先に教室に戻っていった。


(ていうか今日⁉…まあいっか)


しかし、俺は困っていた。

いくら田舎だろうと俺の家はいわゆる屋敷というやつなのだ。


(大野さんも引くだろうな〜)


俺はその時までそんなことを思っていた。



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