僕の隣の君と

みさか/UN

プロローグ

小さい頃というのは皆コミュ力オバケで、誰とでも仲良くなれたものだ。


陽キャとか陰キャとか、そんな概念すら存在せずに、俺も例にも漏れずに、ただただ「みんな仲良く」というのを体現していた。


しかし年を重ねるにつれ、体裁だとか、プライドだとか、そんなものばかり大事になって、どんどん交友は狭まっていく。


しかし、その中でも馬が合う一部の友人がいる。


お互い「親友」とか言い合って、ずっと一緒にいたものだ。


でも、そういう「親友」とかに限って別れは早い。


進路が分かれるとか、引っ越しするとか、ある日突然いなくなるとかetc……


そんなこんなで、「親友」とかいうのは基本同性だろう。


それに、男女の友情が成立するのは創作だけだ。


そもそも成長につれて好きも嫌いも変わっていくんだし、昔からの友人ってものは非常に珍しいのではないだろうか。


作り笑いひっつけて接する関係の何が「友達」なのか。


――――今でこそそんな考えを持っている俺だが、こんな俺にもずっと昔の話になるが、十分「親友」と言えるであろうがいた。


……もっとも、昔に忘れてしまった以来、それっきりだが。


そいつのことは今はもうほとんど覚えていない。


時間経過で忘れた―――と言いたいところだが、俺がたら単に忘れてしまった、というのが正しい。


まあつまり言いたいのは……こんな俺にもそんな時期があったということだ。


が誰だったのか今にも思い出したい。)


俺はそう思って信じていた。


―――――――――――――


教室の隅で窓の外を眺めている一人の男子がいた。


その名も須藤すとう彼方かなた――――要するに俺である。


誰にも見つからず一人寂しく校庭のトラックを見ていたところ、


「おーい。お前ら!座れ〜。」


勇ましい声で俺たちの担任―――鬼頭きとう先生が入ってきた。


俺たちの担任は見てくれは怖いのだが、しっかりもので、怒るときは怒る、甘やかすときは甘やかすなどアメとムチがうまい先生なのだが、それを知らない他の生徒たちからは怖がられている。別名、鬼瓦先生。

ちなみに先生はその事をすこし気にしてるらしい。


その先生が、


「今日は転校生を紹介する。ささ、入ってこい。」


と言って扉を開けた。


フワワ〜ん。何処かで効果音が流れた気がした。

そして入ってきたのは――――美少女だった。


「おはようございます。今日この学校に転校してきた大野麻衣です。よろしくおねがいします。」


「だそうだ。えーとなら席はっと。」


そう先生が悩んでいると、大野さんがこっちに来て


「先生!この席があいてるので座っていいですか?」

「ん?ああ。イイぞ。どこでも」

「分かりました。」


そう言って大野さんは俺の隣の席に座った。

……隣⁉


「よろしくね?須藤君!」


…え?

……えええ

………えええええ⁉


今思えばこれがこれからの物語の始まりだったのかもしれない。

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