第13話 依存と洗脳
あれから次の日、僕はクロードに部屋へと呼び出されていた。
「なぁフラン、よく聞いてくれ。僕はお前に殺しだとか盗みだとかそんなことはさせたくない。セザールには何とか誤魔化しておくからここから一人で逃げてくれないか」
「なんでクロードは逃げないんだ」
「僕は……あの人には僕が必要だから。僕がいないと壊れてしまうかもしれない」
「あいつのことはどうでもいい、クロード、このままいたらあんたが壊れるんじゃないのか」
「もう壊れきってるさ…僕は大丈夫だ」
「いいや、僕は許せない。あんたが一緒に逃げてくれないなら僕もここに残る。僕ら家族なんだろ?兄さん。」
「に、兄さん……!そんな風に呼んでくれるなんて……!!」
「く、苦しいくるしい」
がばっと抱きつかれる。思い切り抱きしめられ苦しい。
「でも僕は残らなければいけないんだ。あの人は……ずっと僕を可愛がってくれた。」
「じゃあ、僕とセザール、どっちが大事なんだよ」
「それは……それは、僕には決められない」
「わかった、じゃあ返事は明日まで待ってやる。僕を選ぶか、あの人を選ぶか。よく考えておくんだな、兄貴」
「ちょ、待ってくれよ……はぁ」
僕はその場を後にした。用意されている自室へと戻る。
クロードのおかげで今僕の首輪は作動しておらず、薬の効能は消えている。不眠症だが久々に安らかに眠れそうだ。
ーーーーー
コンコンとドアのノックが鳴る。
「おい悪魔の少年、いつまで寝てる。セザール様がお呼びだぞ」
「……クロード?」
「セザールの前では僕らは兄弟でないことにしてくれ、頼む。フードもちゃんと被っていてくれ」
小声でそう言われる。知られると何か悪いことでもあるんだろうか。
「……わかった」
「さ、行くぞ」
眠たい目をこすりながらクロードについていき、セザールの自室らしき部屋まで連れてこられた。
「やあ、クロード、そしてフラン。」
「はい、セザール様」「……どうも」
「今日呼び出したのは…フラン、君のことなんだが」
「おや、僕は誰の前でも名前を名乗ってはいけないはずでは」
「まあいいでしょう。フラン、君は今日限りでこの教団を抜けてもらう。首輪の鍵はクロードから渡してもらいなさい」
「え、それは…なぜ僕が?セザール様の言いつけ通りにしていたはずですが」
「ちょっと思うところがあってね。そういうわけだから、もう二度とこんなところに来ちゃいけないよ、フラン。さ、行きなさい」
「……」
クロードの方を見つめる。なんだか複雑そうな顔をしている。僕だけ逃げろと言っていたはずなのに。
「わかりました。僕は行きます。ではなぜクロードまで呼び出したのですか?」
「この後にちょっと用があってね。さあ、早く行きたまえ。」
「……はい」
僕は教団を後にし、元々住んでいた貧民街のダストへと歩き出すのであった。
ーーーーー
「クロード、フランのことはもう知っているね」
「何のことです?」
「君の弟だろう?わかってるはずだ」
「……何故?あの少年が僕の弟?名前が一緒なだけではないですか?」
「ロイヘンから聞いたんだよ、昨日君たちがどんな話をしていたのか。ねえクロード。君は僕から離れない。そうだろう?」
「はい、もちろんです。だから断ったじゃないですか、僕はこの教団を抜ける気はありません」
「今日本当はなんて返事をする気だったんだい?」
「だから、抜ける気はありませんって」
その瞬間、叔父さんは僕を平手打ちした。次に顔を殴られ、首を絞められる。
「がっ……!はぁ……っ!」
「僕から逃げようなんて思わないことだよ、クロード」
そうだ、やっぱり僕は、ここから逃げられない。
期待なんかしなきゃよかった。
フラン、君だけでもどうか幸せにーー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます