第12話 家族

「今回は子供の母親からの依頼だ。邪魔な娘を殺してほしいと依頼があった。」

「親がいても疎まれるなんて。僕に親がいてもそうだったんだろうな」

「お前、ずっと独りなのか?」

「そうさ。僕はずっと独りで誰にも頼らず生きてきた。今更家族なんていらないんだ」

「それは……気の毒だな」

少年はまだ若く幼いであろう声をしていた。若くしてそんなに人生を達観しているなんて、さぞかし大変な人生を送ってきたのだろう。

まあ僕も似たようなものなのだが。

「ほら、家に入るぞ。親は留守のはずだ」

少年が先行してドアをノックした。ゆっくりとドアが開く。

「お嬢さん、可愛らしい子だね。くりっとした目はとても美味しそうだ」

にやりと笑うと少年はナイフを取りだし、すぐさま娘の喉を掻き切る。

「いただきます!」

次々にナイフで体を滅多刺しにしていく。ナイフで取り分けては生肉を口にする。

本当に悪魔のような人間だ。

「ははは、はははは!!!おいしい、美味しい!!小さい子供の肉はなんて美味しいんだろう!最高だ!僕の全身からの血の香りが!どこもかしこも血だらけだ!はははは!!」

内臓と返り血にまみれる姿はまるで化け物のよう。

「おい、もういいだろ!お前、やりすぎだ。もう骨しか残ってないじゃないか」

「骨の髄までしゃぶり尽くさなければ命への冒涜だろう!」

よだれを垂らしながら骨まで貪るその姿は自分にも恐ろしく写った。

「はぁ……はぁ……」

あれから数十分と経ち、やっと満足したのか少年はぐったりとしている。

すると突然すすり泣く声が聞こえてきた。

「僕……僕、は……本当は殺しなんてしたくない。クロード、僕を殺してくれ。これ以上人を食べ、殺めたくない」

その発言は妙に過去の自分と被った。自分も本当は殺しなどしたくないのだ。ただ生きる意味が殺しにしか見いだせなくなってしまっただけ。

「泣いてるのか」

そういえばこの男の素顔を僕は見た事がない。どんな顔をしているのだろう。どんな顔で泣いているのだろう。

泣き崩れる彼には抵抗する余裕もなく、終始深く被っていたフードは呆気なく僕の手によって外された。

綺麗な赤い髪と赤い瞳。なんだかとても見覚えのある顔。自分に似た顔。まさか。まさかこいつはーー

「お前、もう一度聞いていいか。名前は」

「僕はフランだよ。こんな名前忘れてくれ、今すぐにでも死にたいんだ…」

「フラン……」

そう呟くと、気付けば僕は彼を抱いていた。

「フラン。フランなのか……?あの日攫われて……とっくに亡くなっていると思っていた。フラン、僕はお前の兄だよ」

「何意味のわからないこと言ってるんだよ……僕には生まれた時から親も兄弟もいない。そんなわけない」

「お前は15年前攫われた子なんだよ……!優しい母も父もいた!でもあの日全て失ってしまった……ああ、僕と同じ血が流れるお前が生きていたなんて……」

「嘘だろ……?本当か……?」

泣き腫らした目でこちらを見つめてくる。くりくりとした目の下にはくまが出来ている。

「フラン、一緒に生きてくれ……お願いだ、死ぬなんて言うな……僕の本当の家族はお前しかいない……」

彼を抱きしめながら僕はキスをした。

この地獄を一緒に生きてくれるのはもう、君しかいない。

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