第10話 化物か人間か
「僕はこの街に訪れたことは数える程しかない。なぜ僕が悪魔だという噂を知っている?」
"医務室"に入るや否や僕はナイフを面前のそいつに突きつける。
「まあまあ、治るならアナタにとって有難いことデショウ?」
「……そうかもしれないが、今までどんなに探ってもそんな方法はなかった」
「ワタシはスゴウデの天才ドクターなのでそんなこともチョチョイノチョイですよ♪食べずにはいられないのでしょう?直して差し上げマス」
見るからに怪しい。しかし、僕の噂についても詳しいのだろうか。
信用してみてもいい……のか?
「さ、診察台へドウゾ。仰向きに」
「…ここに寝転がればいいのか」
「そうデス」
するとその瞬間、どこからか拘束具を装着される。
「っ!おい、どういうことだ…罠だったというのか」
「アナタにはワタシの実験に付き合ってもらいましょう」
「実験ってなんだ!!僕はこれでも人間なんだぞ、くそっ……」
「麻酔が効きますから安心してクダサイ♪目覚めれば"全て"が終わりますよ。アナタは我々の兵器になるのデス」
注射針で麻酔のようなものを打たれる。こいつに僕の体を任せたら、もしかすると、もっと凶悪で醜い怪物に、僕はーー
「フラン・ヴァクトマイステル。あなたに幸運が訪れますように」
「……ヴァクト……マイステル……?」
ぼくの…苗字?
考える間もなく意識が途切れたーー。
「失礼しマス〜」
「ん。ロイヘンか」
「セザールさん、面白い子を連れてきましたヨ〜」
黒いフードを深く被った、少年…だろうか。少女と見違えるほど華奢な体だ。
首輪をつけられ、鎖でロイヘンの手元へと繋がれている。この首輪についた針からは覚醒剤や幻覚剤が打ち込まれていることだろう。
「名前はなんて言ったカナ〜、まあいいでしょう。最早この少年は怪物に成り下がりました。クロードにでもお世話させますか?」
鎖を渡された私には、目の前にいる少年の正体がまだわからなかった。
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