第9話 出会い
この日僕は、隣町のレミスタへとやってきていた。
ダストでは悪魔のような人間として、僕の名が知れ渡っている。そのため、体を売ろうにも物を盗もうにもやりにくいのだ。
そんな時僕は時折この街を訪れる。
「ねえ、お兄さん」
ちいさな子供だ。この街でもこういうかつての僕のような子供がたくさんいるのだと思い知らされる。
「ぼくとあそんでよ」
「僕と仲良くしたっていいことはないぞ」
「ううん。お兄さん、曇った目をしているのに純粋な目をしてるよ。他の大人と違うの。さみしそうで、かわいそう」
「そんなことは、ない」
気安く話しかけてくる子供。
僕はこういう危機感のない子供は嫌いだ。幼少期の自分とは真逆。しかもこんなスラム街で、いつ相手が懐のそのナイフを向けてくるか分からないというのに。
「お兄さん、あそぼ」
「嫌だ」
「かくれんぼしよ、かくれんぼ!」
「はぁ……」
目を閉じて数える間に子供はどこかへと隠れた。
「みいつけた」
気がつくと僕の全身は血に染まっていた。
僕の前に転がる残骸。骨だけ残った、まだ幼い子供と思わしき死骸。
ああ……
僕は本当に殺人鬼なんだ。悪魔の子。そう噂されてきた。
「ああ…だれか……誰かこんな僕を……」
「おや、お客人ですカ〜?」
絶望に打ちひしがれ蹲っていると、目の前には気付けば先程までは無かったはずの怪しい看板があった。
『welcome!My doctor!』
「……誰だ、お前」
「どんな悩みも解決する!ドクターである私ロイヘンが何とかして差し上げましょう♪」
「どうせ麻薬の類いでも使うんだろう。そんなのは僕の悩みを解決してくれない」
「…あなたの悪魔体質も直せるかもしれませんヨ?」
小声で僕の耳元で囁くそいつは、今思えば僕よりもよっぽど悪魔じみていた。
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