第三話 それぞれの結末
聖女ディアーヌは魔法の隠れ里の長のところまで案内された。
「あなたがこの里まで迷い込まれたという聖女様ですか。失礼ですが何があったのかうかがってもよろしいですか?」
長というにはまだ若く、端正な顔立ちの男は優しくそう問いかけた。
「実は……聖女として守っていた国から追放されました。わたくしの力を詐欺だと王子に言われ、その王子との婚約も破棄されてしまいました」
「なんと……。もしやダンタロス王国ですか? あそこは最近魔物が増えたと聞きます」
「そうです。今まではわたくしが結界を張っておりましたが国外追放されてしまったので今は結界がない状態です」
「なぜ王子はそんな馬鹿なことを。ダンタロス王国は国王が亡くなったと聞いています。きっとその王子が国王になるでしょう」
「亡くなってしまわれたのですね。それではわたくしは二度と王国に帰ることは出来ませんね……」
ディアーヌは寂しそうにそう呟いた。
「聖女様、よろしければこの里に住みませんか? もともとこの里は魔法使いを良いように使う人間に嫌気がさして作りました。皆あなたを受け入れますよ」
「本当ですか? それは嬉しいです。旅にも少し疲れておりました。住むかどうかはまだお答えしかねますが、お言葉に甘えて少しだけお世話になりたいと思います」
「どうぞゆっくりしていってください。こんな綺麗で魅力的な聖女様がいると里が華やかになります」
「魅力的だなんてそんな。お世辞でも嬉しいです」
「いえいえ、お世辞などではないですよ!」
長の言葉は本当にお世辞ではなかった。この里では魔法の力も異性の魅力のひとつとして考えられている。もともと綺麗な顔立ちをしているディアーヌは、聖女の力でこの里の誰もが憧れる存在となった。
あまりにもディアーヌに対する求婚が多いため、里の祭りで勝ち残った者がディアーヌに求婚出来るという決まりが出来るほどに。
その頃ダンタロス王国は悲惨な状況になっていた。国王が倒れてからやりたい放題の王子は、自分の住む王都のみを国王軍に守らせていた。王都以外の街は魔物で溢れ、王子に対する国民の不信感は限界まで達していた。国王軍はクーデターを画策している。王子が討たれるのも時間の問題だった。
王子と対象的にディアーヌには幸せな結末が待っていた。里の長と結婚し、子宝にも恵まれて、魔法の隠れ里で末永く幸せにくらした。
(婚約破棄をしてくれて本当に良かった)
ふとした瞬間に聖女ディアーヌはそう思うのであった。
【完結】婚約破棄された聖女は魔法使いの隠れ里で溺愛される~私を捨てた国がどうなっても知りません~ 新川ねこ @n_e_ko_
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