転校生

バブみ道日丿宮組

お題:近い机 制限時間:15分

転校生

『まだ教科書ないから、見せて』と転校生が机をくっつけて、おまけに身体もこちらに寄せてきた。

 いい匂いがした。

 ボディソープの香りか、彼女の元々もつ匂いか。

 同性だというのに、なにか会得しそうだった。

「どうしたの?」

「な、なんでもない」

 授業が始まるまであと数分。なにか会話をすべきだろうか?

 転校生特有の質問タイムは朝に終わりを告げて、彼女は安堵してる。

 よっぽど変なことを聞かない限りは、大丈夫だろう。よし。

「えっと、ボディソープはミルクの匂いの使ってるの?」

「えっ? 違うよ。使ってるのは桃だよ」

 気まずい。

 間違えた、間違えた、間違えた!

「もしかして臭う?」

「んーっとえっと……その」

 なんて言えばいいのだろうか。そうです、ミルクの匂いがします。甘いです。飲みたいですと暴露すればいいのだろうか。昼休みにまでもう少しだからね、お腹も減ってるんだよ!

「そっか。最近母乳が出始めたからかもしれない」

「へぇ……母乳が……母乳!?」

 思わず声が裏返った。

 まわりの視線を感じ、口を塞ぐ。

 はたして視線はバラけた。

「あの……赤ちゃんいるの?」

 真顔の質問。

「まさかぁ。中学生でそれは犯罪だよ」

「だよね」

 お互いに笑い合う。

「うちの家系はね。母乳が子どもの頃から出る体質なんだ。だから、先っちょから今もたぶん出てるから、ミルクの香りがしたんだと思う」

「拭いたりしたりしたほうがいいんじゃない?」

「休み時間にトイレで絞ったりするんだけど、それでも十分じゃなかったりするんだ」

 驚いたりしたが、大変らしい。母乳だものね。私がそれを会得するのはくるのかこないのか。

「そうだ。あとで一緒にトイレ行こう」

「別にいいけど……どうして?」

「吸ってもらおうかなって」

「えぇ、えぇ!?」

 今度は声を抑えられた。

「ど、どうしてそんなことに!?」

「顔が吸いたそうなんだもの」

 顔をペタペタと自分で触るが、もちろんわからない。

 彼女はポケットからポケットミラーを取り出すと渡してくれた。それでも吸いたそうという自分の顔はわからなかった。

「甘い味がするらしいよ」

 転校前の学校でも吸ってもらってた娘がいたらしい。

 同性だとはいえ、それはいいのか!?

 混乱してく私を、チャイムが掻っ攫った。

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転校生 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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