第20話

 カーテンが開き、まぶしくて目が覚める。

 カーテンを開けたのはもちろんレオだった。

「おはよう、ひめ花。」

 上半身裸のままのレオは、私を見て微笑んだ。

「…おはよう。」

 明るいところであらためて見ると、やっぱり恥ずかしさの方が勝った。

「体、大丈夫?しんどくない?」

「たぶん大丈夫だと思うけど。」

 寝起きでボーっとしたままベッドから起き上がろうとして、まだ何も身に着けていないことに気付く。

 思わず体を隠す私を見て、レオはからかうように言った。

「もう夕べ全部見たじゃん。今更そんなに隠さなくても。」

「だって、こんなに明るいところでは見てないでしょ。」

「そんなの、明るさなんて大した問題じゃないだろ。」

「だって、レオ眼鏡かけてるじゃない。」

「うん、おかげでよく見える。」

「ばかっ!」

 私は下着やパジャマを探すが、見つからない。

「レオ、私の服は?」

「いるの?今日はずっと俺とベッドにいるっていうのはどう?」

 レオの甘い提案に、私は一瞬心が揺らいだ。

「ダメに決まってるでしょ。早く出してよ。」

「そう?仕方ないな。」

 レオは服をベッドの下から取り出して、私に手渡した。

「夕べはアンジェだったけど、昼間のひめ花はやっぱりガッティーナだな。」

「どういう意味よ。」

 私はベッドの中で隠れながら服を身に着けながら問う。

「どっちもかわいいって事だよ。」

 ベッドから顔を出した私に、レオはキスをひとつした。

「ところで今何時?」

「もうすぐ10時。」

「うそっ、学校すっかり遅刻じゃない!」

 私は頭を抱える。

「大丈夫。さくらさんには、風邪がぶり返したって言ってあるから。」

「ママに?いつの間に?」

「ひめ花が気持ちよさそうに寝てる間に。」

 レオがいたずらっ子のように笑う。

「俺が看病するって言ったら、任せるわだって。」

「ママったら。」

「だから俺に任せておいて。何して欲しい?」

「…レオは何にもしないで。」

「………」

「何にもしなくていいから、傍にいてくれない?」

 それを聞いたレオが私をぎゅっと抱きしめる。

「当たり前だろ。ずっと傍にいるから覚悟して。」

 私たちは顔を見合わせて軽くキスをし、微笑みあった。

「さてと、とりあえずはシャワーでもしようかな。」

「一緒に入ろうか。俺が洗ってあげる。」

「何言ってんの。そんな事するわけないでしょ。」

「傍にいて欲しいんじゃなかったっけ?」

「それとこれとは違うでしょ。」

「つまんないの。」

 レオが拗ねたふりをするのがおかしかった。

 私は立ち上がり、部屋を出ようとしてドアを開け、振り返る。

「レオ、今日仕事は?」

「俺は夜から。」

「…それまで一緒にいてもいい?」

「ひめ花のお望みならね。」

「じゃあ、ここで待ってて。」

「ひめ花の部屋がいいな。」

「…わかった。じゃあ後で。」

 私はレオの部屋のドアを閉めた。


 着替えをもってお風呂場へ行くと、勢いよくシャワーを出して頭のてっぺんからつま先まで念入りに洗った。

 部屋に戻ると、レオが待ち構えていた。

「レオ、いつからいるの?」

「ひめ花が行ってすぐ。ここならひめ花を感じていられるから。」

 レオの事を愛おしいと思う自分がいる事に気付く。

「ねえ、鍵かけてこっちに来て?」

 レオのいう事に、もはや条件反射のように身体が動く。

 言う通りドアに鍵をかけ、レオの方へ歩いて行った。

 レオが私を抱きしめ、思い切り深呼吸する。

「ひめ花のシャンプーの匂い、いい匂い。」

 私はくすぐったくて、何だかムズムズした。

「レオ、眼鏡は?」

「コンタクトに代えた。眼鏡だとくっつくのに邪魔だから。」

 レオが私の首筋に目をやると、そこにはやっと消えかかったキスマークがあった。

「もう1回、付け直す?」

「これはもういらないでしょ。」

 私の身体にはレオの痕跡があちこちに残っていた。

「見えるところには付けてないだろ。」

「こんなの無くたって、私はもうレオのものだから。」

 レオは苦笑する私を抱き上げ、ベッドまで運んだ。

「ああ、俺すっごい盛ってる。ひめ花が欲しくてたまらない。」

 声がうわずるのをこらえるように、レオが私を見つめて言う。

 この綺麗な獣は、私を休ませてくれないのかしら。

「俺の貞操を捧げるから、責任取ってよ。」

 好きな人の瞳に見つめられて求められ、拒む事なんてできるはずもなかった。。

 結局私は抵抗しきれず、レオと快楽の淵に沈んでいった。

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