第18話
その時、暗闇から一台の車が駐車場にやって来た。
勢いよく止まると、中から現れたのはレオだった。
瞬間、何が起こったのか分からなかったけどそんなことはどうでもよかった。
「レオ!」
私は走りよるとレオに力いっぱい抱きつく。
安心感で力が抜け、今にもしゃがみ込んでしまいそうだった。
「ひめ花、大丈夫…じゃないみたいだけど?」
レオが抱きしめてくれると、さっきまでの違和感は消えてしまった。
「俺が来たからもう大丈夫。で、そこのに何された?」
私は答えることが出来ない。
「まだキスしかしてないんだけどな。登場、早すぎません?」
恵がレオに話しかける。
「遅すぎたくらいだな。俺のひめ花に許可なく触るんじゃないよ。」
「俺の?ひめが好きなのってこいつなの?」
「当たり前だろ。どう見ても俺の方がいい男だろ。」
レオは威嚇するように恵に言った。
「お前が俺に勝てるところなんか一つもないっていうの。いいからもう帰りな、一人でな。」
恵は分が悪いと感じたのか、それ以上何も言わず運転席に乗り込むと走り去ってしまった。
「さてと。ひめ花、もう大丈夫。悪い男はいなくなったから。」
私はレオに包まれているうちに涙は止まっていた。
「…レオ、何で?」
「さあやちゃんから連絡もらったんだよね。」
「さあやから?」
「なんか、男と二人で帰るらしいけど心配だからって。」
持つべきものは、察しのいい友人だ。
「でも、どうしてここが?」
私だってここに来ることは知らなかったのに。
「それは、スマホのGPSで。」
「GPS?そんなのいつの間に?」
「ひめ花が酔っぱらって帰って来た日。いつか役に立つかと思って。」
いつもなら勝手な事してと怒るところだ。
「まさかこんなに早く使うことになるとはね。」
「ありがとう。すっごく怖かった…」
「遅くなってごめん。俺、ひめ花の事守れなかった。」
「そんな事ない。レオが来てくれなかったら…」
その先は、想像するのも恐ろしかった。
「さあ、帰ろう。これ以上遅くなったらさくらさんが心配するから。」
「…その前に、お願いがあるんだけど。」
「何?」
「…キスして欲しい。」
恵の感触がまだ残っているみたいで、レオに上書きしてもらいたかった。
「いいよ。」
レオは軽く私の唇に触れた。
そして優しく私を離すと、車に乗せドアを閉めた。
エンジンをかけ発進させるレオを見て、私は決心を固めた。
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