第14話

 2日後、レオはすっかり回復し、そして私がベッドの人になった。

 37.5℃くらいだったけれど、平熱が36.0℃を切る私にとっては結構つらい熱だった。

「今度は俺が看病してあげるから。」

 なぜか楽しそうなレオが私の部屋にやってきた。

「大丈夫よ。もう薬も飲んだし、氷枕も冷えピタもしてるから。」

 ベッドの中から私が言う。

「えー、つまんないの。準備よすぎない?」

 レオはすっかりいつものレオだった。

 今の私が相手をするには元気がよすぎる。

「レオが寝込んだから準備してあったの。いいから、一人にしておいて。」

 私はレオから顔をそむけた。

「ふーん…そうだ、いい事思いついた。」

 レオがベッドに入ってこようとする。

「ちょっと、何するの?」

 私は慌ててレオを制する。

「何って、添い寝だけど?」

「添い寝って、移っちゃうでしょ。」

「俺からひめ花に移ったんだから、俺には移らないよ。」

 自信たっぷりにレオが言う。

「それとも、試してみる?手っ取り早い方法もあるけど。」

「…どうするの?」

「こうするの。」

 レオが顔を近づけてくるので、私は必至で抵抗した。

「何するの。」

「何って、ひめ花の想像通りのキスだけど。」

「ダメだってば。せっかく治ったのに。」

「だって、ひめ花辛いんだろ?」

 これ以上レオの相手をするのは体力的に限界だった。

「とにかく、しばらく寝てればよくなるから。レオが一番わかってるでしょ。」

「そりゃそうだけど。」

「じゃあ、眠らせてくれない?一人で大丈夫だから。」

「一人だと淋しくない?」

「本当に大丈夫。レオは自分の事してて。」

「…わかった。今日の所はひめ花の言うとおりにするさ。」

 面白くなさそうにレオが言う。

「その代わり、元気になったら俺のために時間作ってよ。」

「分かった。元気になったらね。」

 約束を交わすとレオはやっと部屋から退出した。

 もう私はまぶたが重たくて、目を瞑るとあっという間に暗い淵に沈みこんでいった。

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