第41話 分岐点

家を出ると、ちょうど狩りから戻ったウェルと会った。

僕はウェルへも事の経緯を話し、森を旅立つ事を伝えた。


「人間について行くとか…全く理解できないけどな。」


ウェルは失望したように僕に語りかけた。

もちろん、ウェルを否定するつもりは全くない。けれど、僕は僕を貫きたいんだ。


「だけど、森を出て世界を見たいってのはわかるぜ。実は俺も、近々森を出ようと思ってたんだ。」


『え!?ウェルも?』


「ああ!俺はもっともっと強い奴と戦って、誰にも負けないくらい成長して、獣人の力を知らしめたい!」


ウェルらしい回答だな、と率直に僕は思った。

けれどなぜだろう、この時の会話に、僕は言い表せない不安を感じていた。


『ウェル…またいつか必ず会おうね!』


「ああ!そん時はお前がびっくりするくらい強くなってやるぜ!」


月が沈み、太陽が昇る直前の、世界が紫色に変わる数分、僕らは固い約束を交わした。

願わくば、ウェルとはまた笑って再会したい。

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