第40話 家族

「あら?ルークもう戻ってきたの?今夜の狩りは辞めにするのかしら?」


母さんは何も知らないまま、僕へ話しかけてきた。

本当の事を母さんに話したら、激怒するだろうか。

けれどディズ、そして先生がくれた勇気を無駄にする訳にはいかない。


『母さん…ちょっと話があるんだけど…。』


僕は神妙な面持ちで言葉を発する。


「…だいたい想像ついてるわよ、あの人間たちについて行きたいんでしょう。」


僕は母さんに猛反対されると覚悟した。

けれど、返ってきた言葉は真逆のものだった。


「母さんもね、正直人間は好きじゃないわ。弱くて、そのくせ利己的で。でもねルーク、あなたが他の獣人と感覚が違うのはよくわかってる。一度くらい、家を出て旅してみるのも良いと思うわ。」


僕は、この村で多くの人に愛されて、守られて生きてきたんだと知った。

直情的で、それでいて仲間思いな獣人と言う種族が、僕は大好きだ。

それでも…いや、だからこそ僕は自分の気持ちに正直でいたい。


『母さん、ごめん。でもありがとう。明日の朝…旅立つよ。』


「いってらっしゃい、ルーク。たまには森に顔を出すのよ。」


母さんの思いを受け止め、僕はその後自室で少し休んだ。


夜明けより少し前、僕は支度をして家を出る。


「行ってきます。母さん。」

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