第39話 ルークの才能

「ルーク、少し話をしても良いですか?」


先生は、いつもの穏やかな声で語りかけてくる。


「無理をしなくても良いのですよ。あなたは人間、そして外の世界に憧れているのでしょう?」


先生の言葉に、僕はドキッとした。


『先生はやっぱり何でもお見通しなんですね。…こんな事を考える僕は、やはり獣人として間違っているのでしょうか?』


魔法、人間、世界…全てが僕にとって真新しくて不思議の塊だった。

人間は卑しい種族と聞いていたけど、僕にはそう見えなく、少なくとも僕にとってレオンとマリーは既に信頼する仲間だった。


「それこそが、あなたの本当の力なのですよ。」


戸惑う僕に、先生は続ける。


「私は、かつてあなたの父と共に城の兵士として戦っておりました。あなたの父からは息子が他の獣人と違い、よく考えて、非常に思慮深いと聞いていました。あなたも薄々気づいている通り、このまま獣人が閉鎖的な種族なら、その未来も危ういでしょう。私は、あなたが獣人の新しい未来を築いてくれると思い、ずっと側で見守ってきたのです。」


気づかなかった。確かに僕は他の獣人と比べて鈍臭く、何をするにもまず考えてしまう。

でも、先生はそんな僕に希望を見出して、ずっと支え続けてくれていたのだ。


「ご覧の通り、片腕のない私ではもはや世界を変える事は出来ません。けれどルーク、あなたなら、獣人の未来…いえ、この世界を変える事が出来ると信じています。自分の気持ちを、正直に言ってみなさい。」


『僕は………レオンとマリーと一緒に外の世界を知りたい!もっと冒険して、いろんな事を見てみたいです!』


僕の言葉を聞いて、先生はにっこり笑ってくれた。


「ルーク、それでいいのです。」


僕の瞳は、どこからか涙が滲んでいた。

ずっと才能がないと押し殺してきた正直な気持ちを言う事ができて、そしてそれを理解してくれる人がいてくれたことに、心から感謝した。


「さあ、今日は家に戻って家族へ挨拶をしてきなさい。明日の朝、レオンさんとマリーさんが待ってますよ。」


僕は深々頭を下げ、家路に戻る事にした。

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