第37話 友達
「お2人の力は間違いないようですね。」
先生はそう声をかけ、ディズと先生で2人を獣人王様の元へ案内しようと提案してくれた。
レオンとマリーも、獣人王様に会える事に安堵したのか、少し肩の力が抜けた様だった。
僕はと言うと、さすがに一般の獣人の身分で獣人王様の元へはいく訳には行かず、4人を見送ったあと、ウェルを追って森へ出かける事にした。
ウェルの匂いを辿って森を彷徨う。
今日も月が静かに森を照らしてくれている。
この数日でいろいろな事があった。
ディズと先生の戦い方、未知のモンスター、人間との出会い、そして外の世界。
僕はちょっと前まで、動物すら満足に狩る事が出来なかったのに、今では信じられないくらい自分の世界が広がった。
世界はこれからどうなるんだろう?
森は平和を保つ事ができるのか?
そんな事を考えていながら、ようやくウェルと合流する。
「よ!ルーク!今夜はお疲れだったな!」
ウェルはいつもと変わらず、爽やかな声で語りかける。
『ウェルも、もう体の傷は大丈夫なの?』
「平気平気!あんな傷、ダメージに入らないぜ。」
僕はウェルの元気そうな声に、一安心する。
「けど、すごいよな!ディズさんも先生も。俺も次にモンスターと出会ったら、試したい技がたくさんあるぜ!」
獣人らしい、強さを求める回答が返ってきた。
ウェルの気持ちはわかるが…僕は思い切ってウェルに尋ねてみる。
『そうだね、僕も知らない事ばっかりで、未だに信じられないよ。でも…ウェル自身は世界の異変についてどう思ったの?』
ウェルはあっさり答える。
「ああ、人間同士の争いの事か。全く興味ないね。それよりさ!ウインドストライクの回転方向を変えたら、もっと違う威力の技になると思わないか!?」
僕はウェルの回答に、少し寂しい気持ちになった。これからこの森が、世界が滅んでしまう可能性だってあるのに、あくまで強さしか興味のない獣人の性に、僕は何か儚いものを感じてしまった。
『ああ…そうだね。今度試してみなよ。』
ウェルは獣人の基本を教えてくれた、大切な友達だったのに…僕はこんな上っ面の言葉しか言えなかった自分を軽蔑してしまった。
それから僕らはいつもの様に狩りをし、明け方村に帰った。
レオン達はまだ獣人王様のところから帰っていなかったから、僕らはその日は解散して家で休む事にした。
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