第33話 狙い

想像力の薄い僕でも、何となく状況が読み込めてきた。

けれど、僕はあえて自分の考えが間違っていないか先生へ問いかける。


『先生、レオンとマリーの話を要約すると、この森が無くなるとブロリセアンドとメドウが開戦し易くなってしまい、ひとたび戦いが始まれば大陸を巻き込む戦争に発展しかねない…という事ですか?』


「ええ、私もそう考えています。そしてモンスターの大量発生は、大陸を巻き込む戦争を望む者によって起こされている…という事ですね?レオンさん、マリーさん?」


さすがに先生は冷静だ。

先生とて、人間に好印象はないだろう。

けれど、事態の重さを考えて、レオンとマリーに歩み寄っている。


「その通りです、ライバーさん。モンスターの大量発生は、転移魔法を使えば難しい事はありません。そしてこの状況を作り出したのは、おそらく東側の3国のいづれかです。ブロリセアンドとメドウは互いに敵対していますが、開戦には慎重になっている為、こんな事はしません。」


『マリーさん、ひとたび戦いが始まれば全ての国を巻き込むってわかってるなら、森がなくなってもブロリセアンドとメドウが戦わなければいいんじゃないの?』


僕はまたしても、単純な興味をぶつけてしまう。それでもマリーは優しく答えてくれた。


「ルーク、ブロリセアンドとメドウの関係はそんなに単純じゃないの。ルークは家の目の前にモンスターが巣を作ってしまったとしたら、平気で玄関を開けて眠る事が出来る?」


確かにそうだ。そんな事になったらモンスターを倒すか家の守りを強固にするか。いづれにせよ行動に出るだろう。


「僕とマリーの読みでは、首謀者は森の滅亡、ひいては戦争まで狙っていないかも知れません。ただ、この森が荒らされる事で西側の3国は確実に身動きが取れなくなります。東側で大きな行動を起こしたいから、西側が干渉できない状況を作り出したのです。」


「レオンさん、マリーさん、あなた方がこの森に来た意図はわかりました。ですが…。」


先生は言いかけて、ディズに目をやる。

ディズも状況は理解した様だったが、あえて毅然とした態度で答える。


「ああ、人間の国がどうなろうと我々獣人には関係ない!仮に大陸を巻き込む戦いになろうとだ。そして何よりそんな理由で獣人王様に会わせる訳にはいかない!」


「話はイマイチ理解出来ないけどさ、要は俺ら獣人たちだけでモンスター全部ぶっ倒しちまえば良いんだろ?楽勝楽勝!」


ウェルもディズも状況が全く理解出来てない。

僕らは4人がかりでパイロヒュドラ一匹討伐出来ず、かろうじて撤退した事を忘れたのだろうか?


ウェルは獣人の好戦的な性格に酔いしれている。


ディズもディズだ。そんな古い感情に縛られていては、本当に獣人が滅びてしまうかも知れないのに。


レオンとマリーは神妙な顔つきをしている。

この状況を打開する為に、僕はある事を閃く。


『なら、レオンとマリーでパイロヒュドラを討伐してくるって言うのはどうですか?僕ら獣人にとって力が全て。僕らでも倒せなかったモンスターを見事倒せれば、獣人王様に御目通り願う理由にはなるでしょう?』

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