第31話 獣人会議

「驚かせてしまって申し訳ありません。僕はレオン、こっちの女性がマリーです。」


「ローズマリーです。私たちは皆さんと戦うつもりは一切ありません。獣人の森へ無断で侵入した事もお詫びします。ですが、今世界は大変な危機に面しています。何とか私たちを獣人王の元へ連れて行ってくれませんか?」


マリーは穏やかに、しかし真剣な表情で獣人たちへ語りかける。

2人に敵意がない事は、その表情や仕草から十分に伝わった。


「ディズさん、どうします?」


ウェルは少し不満そうにディズへ問いかける。

おそらく人間と戦闘になる事を望んでいたのだろう。


「我々だけでは判断できん。ひとまずライバー様へ報告しよう。」


『先生は無事だったんですね!』


僕は一際大きな声でディズへ聞く。


「ああ…ライバー様は一命は取り留めたが…。お姿を見ても、動揺するなよ。」


僕はディズの言葉に息を呑む。

僕とウェル、ディズ、そして人間のレオンとマリーの5人は、先生の家へ集まる事にした。


先生の部屋へ入ると、ベッドに横たわる先生の姿が見えた。


『先生!無事で何よりです!』


僕は先生の近くへ駆け寄った。

だが、先生の様子がおかしい。


「ルーク…無事…で、何より…です。」


先生は瀕死の重症だ。体毛はおろか全身がただれ、左腕が……ない。

その姿を見て、あの後パイロヒュドラとの戦いが、どれ程熾烈を極めたか想像ができた。


「マリー、この方にヒールの魔法を。」


「わかってるって!すみません、ちょっと失礼しますね。」


そう言うと、マリーは先生に回復魔法をかけた様だった。

先生の体は強い緑の光に包まれ、みるみるうちに皮膚のただれが治っていく。


「ごめんなさい…私のヒールじゃ傷を癒すのが限界なの。失った腕までは戻らないわ。」


そんな事は僕ら獣人でもわかっている。

僕らが驚いたのは、その回復力だ。

獣人が使う回復魔法など、かすり傷や体力を気休め程度に回復させるだけなのに…マリーの回復魔法は完全に先生の傷を治してしまっている。


「人間の方、傷を治して下さってありがとうございます。やはり人間の魔力は侮れませんね。」


先生が含みのある言い方でマリーへ感謝を述べる。

一方でマリーはそんな事も気にせずに、安堵の表情を見せ、レオンも相変わらず真剣な眼差しをこちらへ向けている。


「それで、人間がこの森にいったい何用で来られたのですか?」


「はい、最近多発しているモンスターの大量発生はご存じですね?あれはおそらく何者かによって意図的に起こされています。」


レオンの言葉に、僕らは息を呑む。意図的に大量発生って、いったいどうやって?何のために??


「ならそいつらをぶちのめしてやれば、元の穏やかな森に戻るんだな!」


「ウェルさん、残念ながら私たち人間も、犯人の特定までは出来ておりません。と言うより、一個人の犯行ではなく、国家ぐるみの作戦の色合いが強いのです。」


マリーは、冷静に続けた。

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