第29話 異種族交流

レオンは歳の頃は僕より少し上に感じる。

話し方、歩き方、佇まいに落ち着きがあるからだ。

迷いの森を、人間の歩く速さに合わせて進んでいく。


「改めて案内を引き受けてくれてありがとう。君の名前を聞いてもいいかい?」


『…僕はルーク、この先の村の出身さ。』


本当はこんなにゆっくり歩いている場合じゃない。一刻も早く村に戻って、みんなの無事を確認したいのに!それに…パイロヒュドラ。あんなモンスターを野放しにしておく事は出来ない!


僕は、焦燥感に駆られていたが、人間を案内している以上、僕1人が走る訳にもいかない。

辺りはすっかり日が沈んでしまったが、人間2人は炎を枝の先に灯し、暗闇を照らしながら器用に進んで行く。


「ねぇルーク、あなた何であんなところで倒れていたの?」


マリーとか言う女が話かけてくる。


『最近、この森でモンスターが大量発生していてね。遂には城の兵士でさえ行方不明になるから、僕らは調査の為に南東の岩場へ向かっていったんだ。そこで、パイロヒュドラとか言う巨大な蛇のモンスターと戦闘になってね。劣勢につき撤退したところだったんだよ。」


僕は不満そうに答える。レオンもマリーも悪い奴じゃ無さそうだが、僕ら獣人がモンスターに負けたと思われるのが嫌だったからだ。

しかし、2人の返事は予想しないものだった。


「モンスターの大量発生!まずいなマリー、状況はかなり逼迫している!とにかく先を急ごう!」


「パイロヒュドラ級のモンスターが、もう獣人の王国まで迫っているのね。走ろうか!」


どう言う事かわからないが、2人はモンスターの大量発生に心当たりがあるらしい。

何にせよ、走って移動してくれるのなら、僕としてもありがたい。


『2人とも、はぐれないで下さいよ!』


僕は人間の速さに合わせつつも、走りながら2人に答えた。

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