第28話 運命
目を覚ますと、辺りは夕暮れになっていた。
僕は生きているのか?周りを見ると、僕が意識を失った場所のままである事を理解した。
少しずつ意識がはっきりしてくる。
僕らはパイロヒュドラと戦っていて…!?
そうだ!みんなはどうしたんだろう!?
それに、夜明けが近かったはず。一体いま何時なんだ?
頭の中が一瞬パニックになる。
すると、付近の木々から2つの生物が近寄ってくる。
そうだ!僕が意識を失う直前、何かが僕に近寄ってきたんだった!
モンスターかと僕は身構える。
しかし近寄ってくる生き物に敵意は無さそうだ。
2匹は何かを話しているが、何を言っているのかわからない。
僕ら獣人とは全く別の言葉を使っている様に思える。
距離を取りながら、僕は冷静に考える。
2足で歩き、髪はあるが体毛はない…そして手には長剣や杖を携えている。
あれは…きっと人間だ!
おそらくだけど、片方が男で、もう片方は女だろう。体つきが全く違う。
すると、小柄な方の人間がゆっくり僕に近寄ってきて、僕に手をかざす。
攻撃される!と思ったが、手から放たれる白い光には何の害もない。
何だったんだろう?と思うと、今度は体の大きい方の人間が何か話しかけてきた。
「獣人の方、具合はいかがですか?」
話してる言葉が理解できる???
僕は思わず答えてしまった。
『あの…あなたたちは僕の言葉がわかるのですか?』
「ええ。いまマリーが[理解]の魔法を使いましたから。これでお互いに話せます。」
なるほど、よくわからないがどうやらさっきの白い光の魔法のおかげで、会話が出来るようになったみたいだ。
「よかったです。昨夜見かけた時は息も途切れ途切れの瀕死の状態でしたから。あ!私はローズマリー。マリーって呼んでね。」
こっちが人間の女だろう。身長は僕の半分くらいしかないが、長い髪に柔らかな表情、それに高い声をしている。
「自己紹介が遅れたね。僕はレオン。訳あって君たち獣人王の元へ行く途中だったのさ。」
『獣人王様のところへ!?』
あまりの事に、僕はつい大きな声を出してしまった。
「そうなんだ、僕らには余り時間がない。けれど、森で倒れていた君を放っておく事も出来ないから、1日手当てさせて貰ったんだ。」
僕はどうやらこの人間2人に助けられたらしい。
2人に敵意は無さそうだが、人間には関わるなとあれほど言われている。
無視するか、殺すのが1番なのだろうけど、それよりもまずはウェルや先生たちの事が心配だ。
僕は2人に背を向け、村の匂いを辿ろうとした。
「待って!君たち獣人が僕ら人間をよく思っていないのは十分わかっている。その上で頼みがある!僕らを獣人王のところまで連れて行ってくれないか?」
レオンと名乗る人間が僕へ問いかける。
『レオン…さん?僕としては連れて行くのは構わないけど、あなたたちの命の補償はできませんよ?何せ、僕ら獣人はあなたたち人間を心底嫌ってますから。』
「ありがとう。もちろん覚悟の上だ。だが、決して僕たちは君ら獣人と争うつもりは全くない。よろしく頼むよ!」
人間の男は、真っ直ぐな瞳を僕へ向けて答える。
なんだろう、この人間たちからは強い覚悟が伝わってくる。
僕はダメ元で2人を村へ案内する事にした。
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