第27話 撤退

「ルーク!ウェル!ディズ!よく聞きなさい!このまま攻撃を重ねても、いずれは私たちの方が先に体力が尽きます!まだ余力のある内に、撤退します!」


先生はそう言ったが、パイロヒュドラの攻撃は、一向に止む事なく荒れ狂っている。

辺りは瓦礫の山となり、炎はどんどん拡大していく。おまけにヒュドラは僕らから目を逸らさない。

最早この戦場から離脱する事さえ、非常に困難になってしまった。


「先生!俺はまだやれます!こんな蛇に俺たち獣人が負けるわけありません!」


荒れ狂うヒュドラの首をかわしながら、ウェルが返事をする。


「言うことを聞きなさい!ウェル!いいですか、私が今からヒュドラの注意を引きつけます!その隙に全員散りなさい!村でまた会いましょう!」


そう言うと先生は、高速回転しながらヒュドラの頭上高く飛んだ。5つの頭の全てが、先生の方へ向く。


「ルーク!ウェル!散れ!」


ディズが雄叫びをあげ叫んだ。

僕は、身体中の力を隅々までみなぎらせて、森へ全速力で駆ける。

みんな、無事に村へ戻ってくれ!


僕はわずかな匂いも嗅がず、とにかく森の奥へ走った。周りの景色も方角も全くわからないくらい、戦場から離脱する事に集中した。


どれくらい走ったのかわからない。

体力も限界に近づいた頃、僕は倒木につまずき勢い余ってそのまま地面へ数メートル激突する。


ダメだ、もう疲れて走れない。

それにもうすぐ夜明けだ。

眠気と疲労から、意識がだんだん遠のいてくる…。


ウェルとディズは無事に離脱出来たろうか…。

先生…絶対に死なないで下さい。


薄れゆく意識の中、僕に近づいてくる影が見えた。新手のモンスター?でももう僕には立ち上がる力がない。

まあ、仮に襲われたとして、死ぬのも寝るのも同じ様なことか…。

僕はそのまま意識を失った。

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