第26話 パイロヒュドラ

僕は先生の言う通り、モンスターの動きから目を離さない様に集中する。

パイロヒュドラの頭は、それぞれに意志がある様に見え、それでいて絶妙なタイミングで鞭の様に僕らに襲いかかってくる。


ウェルも先生も僕も、頭の乱撃を交わしつつ、反撃の機会を探る。

砕かれた岩によって土埃にまみれ、時折吐き出される炎で、辺り一面火の海と化す。


「やられてばっかりじゃ面白くないよな!」


ウェルがパイロヒュドラの一瞬の隙を見て、首もに爪を突き立てる。

ヒュドラの首の1つに、大きな傷跡が刻まれる。


ヒュドラがうめき声をあげている間に、黒灰色の影が高速で突進していく。


「ディズ!無事でしたか!」


「ライバー様、私はあの程度の炎では死にません!」


ディズは最初の一撃から一命を取り留めていた様だが、かなり息が上がっている。


「ルーク!同時に攻撃するぞ!」


ウェルは戦いに集中している。

次々に襲いかかってくるヒュドラの頭をかわしながら、僕へ合図してきた。


僕の爪が果たして奴に効くだろうか?

いや!ウェルだって最初のヒュドラの時は相手に傷ひとつ付けられなかったはず!

さっき奴の首に傷を付けれたのは、ウルフファングで攻撃したからに違いない!

なら、僕だって!


僕は左から飛びかかるウェルに対して、右からパイロヒュドラ目掛けて飛びかかった。

右手の爪に、思い切り魔力を込めてヒュドラへ切り掛かる。

粘土をナイフで抉る様な鈍い感覚だったが、僕はヒュドラへ傷を付けることに成功した。


ヒュドラは、更に激しく暴れまわる。

先生もウインドストライクで何度も何度もヒュドラへ突進を重ねる。


僕らは飛び回りながら、何度も何度もパイロヒュドラへ攻撃を繰り返していた。だが…。


「…なんて奴だ…4人でこれだけ攻撃を重ねているのに、全く倒れる気配がしない。」


息を切らせながら、ウェルがつぶやく。


返事をする間も無く、10m以上のヒュドラの頭が絶えず僕らに降りかかってくる。


「まずいですね…」


この状況に、さすがに先生も焦りを感じてきたらしい。

攻撃は通用しているが、決定打にかけ、ジリジリ押されているのは、僕も気づいていた。

僕はいよいよ覚悟を決めていた。

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